書いたもの

□…じゃなくて
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どこか似てはいるけれど。


…じゃなくて

ユーリと旅をしていてカロルがたまに感じることは、ユーリとウォルターがどこか似ていることであった。
見た目の共通点は黒髪、年齢も同じくらいだろうか。顔つきは全く違うし、見た目以外でも特に似ている点は無いはずなのだが、カロルはユーリを見るとたまにウォルターを思い出す。
「カロル先生」
「ふぇ?」
「俺の顔に何かついてるか?」
「べ、別に何でもないよ」
無意識のうちにユーリをずっと見ていたらしい。カロルは慌てて目を逸らしてユーリから少し離れた。
このことはユーリに言わない方がいいだろう。ユーリがウォルターに似ているからついて来た、などと誤解されてしまうのは困る。
ユーリについて行ったのは、恐らくユーリ本人の人を惹きつける何かを感じたからなのだから。
恐らく、というのはカロル自身ユーリについて行った理由がよく分かっていないから。
――僕はもしかしたら、出会ったときからユーリとウォルター兄ちゃんを重ねちゃっているのかな
そう思う度にそれはとてもユーリにもウォルターにも悪い気がした。

カロルはユーリもウォルターも好きだが、ウォルターへの好きとユーリへの好きは違う。
ウォルターへの好きは、命の恩人で兄のような存在に対する一種の家族愛なのだろう。幼くして両親と離れ離れになったカロルにとってウォルターは家族のようなものである。
なら、ユーリは。
ユーリへの好きはどんな好きなのだろう。
兄じゃなくて、ましてや父じゃなくて。自分の中でユーリはどんな存在で、自分はユーリにどんな『好き』を抱いているのだろうか。

――夜になったらユーリと話してみようかな
もしかしたらユーリは答えを知っているかもしれないし、そうでなくとも何か手掛かりになることが聞けるかもしれない。

そうと決まれば沢山話ができそうな宿屋に行こう、とカロルは一行を次の街へと急かした。


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