書いたもの

□リトル
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撫でたくなる頭。


リトル

ユーリはカロルを子供扱いしない時とする時がある、とカロルは感じていた。確かにカロルの話を聞いてくれているし、魔物と対峙している時やその腕前は一人の男として認められているようだ。
だが、戦った後や何か褒められるようなことをした後ユーリはカロルの頭を撫でる。そこがカロルの不満らしい。
撫でられることは嫌いじゃない、ユーリに撫でられるのは寧ろ好きだが、子供扱いされているような気がしている。
「リタとかパティは撫でてないのに」
「あの二人は撫でたら色々と面倒だろ」
なら自分は面倒ではないから撫でられるというのか、とでも言うようにカロルは頬を膨らませてユーリを恨めしそうに見つめた。
「そう怒るなよ」
「ユーリが子供扱いしなくなったら怒んないよ」
「子供扱いしてるわけじゃないんだがな」
ユーリにも言い訳があるようだが、カロルにとって撫でるというのは相手を子供だと思っている証拠。撫でられる本人がそう思うなら何を言われてもそうなのだ。
「撫でられるの嫌か」
「嫌…うーんどうだろう。嫌というか、好きだけど悔しいというか」
「とにかくよく思ってないんだろ、悪かった。止めないけどな」
「えぇ!?なんでさ!」
「なんでだろうな」
そう言ってユーリはカロルの頭を撫でた。


「…もう!」
せめてそこは善処するとか言えばいいのに、とカロルが地団駄を踏むと、善処するという言葉ほど信用できない言葉はないとユーリに笑われた。

――どうしたら止めてくれるのかな…そもそも何で撫でられるんだろう
すっかり拗ねてしまい、ユーリの後ろを黙々と歩くカロルは撫でられる理由を考えていた。
子供扱いしているわけではないとユーリは言う、カロルにとっては子供扱いの証だが。
なら仮に子供扱いしていないとして、ユーリは何故撫でてくるのか。
前を歩くユーリの手を食い入るように見ていると、カロルにある答えが浮かんだ。


「ユーリ」
「なんだ、やけに意気込んで」
「今のうちにいっぱい撫でておきなよ、僕は今にユーリの身長に追いつくからね!」
カロルが辿り着いた答えは『ユーリにとって丁度いい位置にカロルの頭があって、乗せると楽だから』だった。ちょっと馬鹿っぽいとは思ったが、これ以外何も思いつかない。
「リタに馬鹿っぽいって言われるから、他には言うなよ」
「あー、やっぱりそう思う?でもしょうがないじゃん、ならユーリが本当の理由言いなよ!」
「…秘密」
「あーもう!」


そういうところが撫でたくなる理由なんだがな、というユーリの呟きはカロルに届かなかったようだ。



end.

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