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風邪(臨也
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「………………。」

久しぶりに無言の臨也さん。
この人が喋らないのはかなり…つか年に数回しかないんじゃないだろうか。

その数回というのは…。



















『はい、臨也さん。お粥出来ましたから食べて下さい。』


「……俺食欲ないんだけど。」


『病気になった時は栄養つけないとダメなんですからほら食べて下さい。』


そう。病気になった時。


































数十分前。新宿高級マンション。


いつものように合鍵で私は中に入る。

今日は学校は午前中で終わってしまった為、午後からは臨也さんに掃除を頼まれてたんだけど…。


「やぁ、結衣。今日は掃除よろしく頼むよ。」


…………何をどうしたらこの夏真っ盛り、アブラゼミがジージーと鳴く季節に暖房をつけるバカがいるんだろうか。

…私の目の前にいるけど。

『あっつ…元から思ってましたけど、臨也さんってバカですよね。風邪引いたからって暖房つければ治る訳じゃないんですよ。』


「前はこれで治ったんだよ。というか波江と似たような事言うね。」

どんな考えだ。風邪が治る以前に脱水症状&熱中症で倒れるのが先じゃない?これって。


ソファーに寝転がりながら、雑誌を読んでる臨也さん。の横を通りすぎて、エアコンのリモコンで暖房から冷房に運転切り替え。
部屋の温度何度…って35℃!?暑っ!!


『てか、ベッドで寝た方が良くないですか?』


「…………多分今動いたら三歩でぶっ倒れると思うよ。」


臨也さんの額に手を当てるとかなり熱かった。

………これは、39度越えではないだろうか。

よくこれで暖房つけて暢気に雑誌読めたな。


『てか、波江さんは?』


「風邪移りたくないし、今日は仕事もないみたいだから帰る。って。」


『あぁ、そうですか…。』

ちょっと位看病してくれたらいいのに…って絶対あり得ないか。


『まぁ、まず掃除より臨也さんの看病が先ですね。』
ベストを脱いで代わりにエプロンを付ける。


「こういう場合は裸エプr『臨也さんは黙って雑誌でも読んでて下さいうざいです。』……病人だよ?俺一応。」


そんなアホな事言えるんだったら、病人でも軽い方です。

……まぁ臨也さんが無理して元気を装ってるのはわかってるけど。


それでお粥を作って冒頭へ戻る。




全部空っぽになった容器を下げて、私は薬を飲ませ、毛布を臨也さんに掛けた。


「というか結衣はさ〜…、」

『いいから寝てて下さい。』


「……結衣が冷たい(´・ω・`)」


『そんな顔文字使ってもダメなんですから。寧ろ逆効果です。キモいです。』


「…………結衣、俺が病人だってわかってる?わかってるよね?このままだと俺心も風邪引いちゃいそうなんだけど。」


『そんときは自分でなんとかして下さい。』


「…………………。」


臨也のムッとした視線を浴びたけど気にしたら負け。という訳で気にせず掃除した。



全部の掃除が終わったのは、日が落ちる頃で、臨也さんはぐっすり眠っていた。
私は、その寝顔を見つめていた。

長い睫毛、綺麗な髪。

臨也さんって、寝てればカッコいいんだけどな…。
いやまぁ寝てなくてもカッコいいんだけどさ。


「誰がカッコいいだって?」


『それはまぁ臨y……』


「………結衣続きは?」


『……臨也さんいつから起きてたんですか。』


「結衣が独り言喋ってる時からだけど?」


……心の声ダダ漏れだったのか。


「で、結衣、さっきの続きは?」


『調子はどうですか臨也さん。』


結衣はスルースキルを発動した。

目の前の臨也に対して自分に不利益な事に関してはスルーできるようになった!!

「ねぇ、結衣。最近俺に風当たり強いよね?ねぇ?」

『そんな事ないです。』


額に手を当てると、昼間よりはだいぶ下がっている。

これなら後は寝てれば大丈夫だろう。


『じゃあ私帰ります。』


「じゃあ最後にさっきの言葉の続き」


『きちんとベッドで寝てくださいね?』


「……やっぱり風当たり強いよね!?ねぇ!?」

ひたすら駄々をこねる臨也さん。
あなたは小学校低学年の少年ですか。


『………………カッコいいのは臨也さんですよ。寝てる時も起きてる時もどんな時も。』


………これは臨也さんが五月蝿かったから仕方なく!!仕方なく言ったんだから!!別に、臨也さんの駄々に可愛さを感じで言ったとかじゃあないんだから!!


「……………結衣ってさ、時々反則技使うよね。俺さ今ので今日結衣を返す気無くなっちゃったよ。」


ムクッと起き上がる臨也さん。

まだその足取りはちょっとふらついているけど。

私の目の前に立つと臨也さんは、私に体重を預けるように寄っ掛かってきた。


………というかそんなに体重乗せられたら…っ!!


『きゃあっ!!』


「おっと…」


ドサッと、背中に鈍い痛みとお腹に重い感触。


『い…たた…って臨也さんいきなり何するんですか!?』


「いや、俺一人支えられるかと思ったんだけど、やっぱり無理だったみたいだねぇ…。」


『無理ですよ!!私女の子なんですから!!てか、大丈夫ですか?ケガとか。』


「ん?あぁ、俺は大丈夫だよ。」


私が心配したのに少し驚きながら臨也さんは、退いてくれる。


……よし、今だっ!!


私は、体勢を立て直し直ぐ様玄関へ…。


って足掴まれたぁぁ!!


貴方はゾンビですか!?なんか怖い?!!


「言ったろ?今日は返さないって。」


『だから逃げようと思ったんですけど!?』


「……今日はピンクなんだね。」


『……!!!!!忘れろ!!今すぐ忘れろ!!!!!!!』


「まぁ、ベッドでも見るから忘れてもすぐ思い出すけどね。」


『病人なんだから大人しく寝てて下さいっ!!!』


「うん、多分無理。」





(そんな直ぐに返事しないで下さいよ!!)

(じゃあ行こうか。俺達の愛の巣へ。)


(なんか、正臣みたいですね。)


(………………。)

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