平凡に生きたい

□アカデミーに入った
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アカデミーが早く終わった日。友だちがおらず特にやることもない私は、もちろんまっすぐ家に帰る。
と、帰り道で父を見つけた。一週間ほどの任務に出ていたはずなので、その帰りらしい。
「お父さん!おかえり!」
「おっ、フジ!ただいま〜一週間ぶりだな、ちょっと大きくなった?」
私に気づいて振り返った父は、そう言って軽々と私を抱き上げて、また歩き出した。確かにまだ年齢は一桁ですけどね、そこそこ年頃の娘にだっこはどうかと思いますよお父さん。ちなみにたった一週間なので特に大きくはなってない。
そのまま父がいない一週間のことを話しながら腕の中で揺られていたが、途中で、父が家に向かっていないことに気づいた。知らない道だ。
「ん?どこ行くの?」
「ああ、ちょっと父さんの友だちに呼ばれててな。フジもちっちゃいころに会ったと思うんだけど、覚えてないかなあ」
そう言って辿り着いたのは、そこそこ古い大きめの家だった。たぶん、木の葉の忍の旧家だろう。初代火影様の時代からある家が多くて、そういうところはだいたい古い。我が家もなかなか古いぞ。
「どもー林悟でーす」
やっと下ろされた私は、玄関口に立ってそう言った父に、軽いなあと思っていると、奥から見覚えのある人が出てきた。
「やっと来たか。ん? その子フジちゃんか?」
シカクさんだった。三、四年ぶりである。おっさんのため彼は大して変わっていないが、成長期真っ只中の私はなかなかに大きくなっただろう。
「おう、帰り道で会ったから連れてきた。ますますかわいくなったろう」
「シカクさんおひさしぶりです」
はいはい親バカ親バカ、と父を無視して頭を下げればシカクさんが嬉しそうに笑った。
「お、覚えてたのか。おっきくなったなあフジちゃん」
そう言って頭を撫でられる。親戚のおっちゃんのような安心感がある。
まあ上がれよ、というシカクさんの言葉に、素直に靴を揃えて脱いで、父と一緒にシカクさんについていく。客間であろう和室に通され、「母ちゃん! 茶ぁくれ!」とシカクさんが奥にいくのを見送ってから、座布団に遠慮なく座った。
「お父さん、なんでシカクさんち?」
「お仕事の話がちょっとと、あとはただのおしゃべりかなあ。お父さん最近ずっと、長い任務ばかりだったろ」
お仕事の話って私がいてもいいんだろうか。ふんふんと適当に頷いていると、「ただいまー」と玄関の方から聞こえてきた。聞き覚えのある声に、誰だっけと首を傾げる。
居間に行くのに客間の前を通るのだろうか、声の主は私たちの部屋の方へ歩いてきて、姿を現した。
「お客さん?」
「あ、」
ひょいと顔を出したのは、最近名前を覚えたシカマルくんであった。なんと。
「お、シカマルくん。おっきくなった? 久しぶりだね」
「林悟のおっちゃん?」
父はシカマルくんと顔見知りだったらしい。「この前商店街で会ったばっかじゃん」とシカマルくんは言い、私の方へ顔を向けた。
「えーっと、フジ?」
「あっ、はい。そうです」
名前知られてた。えっ、すごい。そういえば二人はアカデミー一緒だもんなあ、と父が呑気に言っているが、存在は私の方から一方的に知っているだけだと思っていた。
私があっけに取られていると、シカマルくんは呆れた顔を見せた。
「いや、同期の奴らはだいたい覚えるだろ。そんな数も多くないし」
「まじか…」
ちなみに私はほぼ覚えていない。確かに同期は五十人もいない。普通に人と交流していれば覚えてるもんよね。私覚えてないけど。
そこにシカクさんが戻ってきた。手に持つお盆には、お茶が三つとカステラらしきものが載っている。
「おう、おかえり。お前暇ならフジちゃんと遊んでこいよ」
「めんどくせえ…」
「ほらカステラやるからよ」というシカクさん。ん〜〜親戚のおっちゃんだ。
その間にお仕事の話でもしたいのだろう。仕方なく私は立ち上がり、カステラのお皿を受け取った。
「シカマルくん、お暇ですか」
「はあ、まあ」
「よっしゃいこ」
「そのうち帰ってきてね」と言う父の言葉を聞きながら、背中を押して、なんとなく玄関の方へ向かう。今日天気いいしなあ。
「遊ぶって何すんだ?」
めんどくさそうに言うシカマルくんに、「ゴロゴロしようよ」と提案する。まあそれなら、と彼は頷いたので、彼オススメのお昼寝スポットへ連れて行ってもらった。
最初は少し気まずかったが、「私友だちいないんだよね」と言うと、同情してくれたらしい。シカマルくんは子どもらしくはしゃぐ性格でもなかったので、カステラを食べたりごろごろしながら中身のない会話をして、日が傾く前にシカマルくんの家へ戻った。
そこで会った、シカマルくんのお母さまに、「また遊びに来なさいね」とお菓子を持たされ、父と共に玄関を出た。
「またね、シカマル」
「じゃーな、フジ」
意外と仲良くなれるじゃん、と思いながら、父と手をつないで家まで歩いた。
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