平凡に生きたい

□アカデミーに入った
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シカマルとまともに顔を合わせて以来、シカマルとチョウジだけが屋上に現れるときは、私もお昼ご飯のお供をさせてもらうようになった。シカマルとチョウジと仲良くなれて感動した。
ちなみに他の面子がいるときは、絶対に顔を出さない。

「別にいいじゃん、怖くないよ」
「いや、あの子たちテンション高すぎ。意味分からん」

チョウジに言われたが全力で拒否である。シカマルは「まあうるせーよな」と半分くらい同意してくれた。気が合うね。心の友かな?

「知り合いもっと増やした方がさー、アカデミー卒業した後に助かるってのはわかってんだけどさー」

どうも周りのテンションについていけなくて、とぼやくと、チョウジは憐れみの目で卵焼きの一番端っこの切れ端のところをそっとくれた。ブツはせこくてもチョウジが食べ物をくれたことに感激である。

アカデミーを卒業した子はほぼ忍者になる。そして、木の葉隠れの里の忍者は、アカデミーができてからはほぼ全てが、その卒業生である。
忍者になれば基本はフォーマンセルでチームを組むし、年齢が上がって行けばいろいろな人と組む機会が増えていくだろう。そんな時に、少しでも見知っていればチームワークは向上しやすくなるし、チームワークが上がれば、それだけ生還率も上がる。ごく一部のハイレベルな人々を除けば、生き残るために社交性は重要なものなのだ。
重要なものなのだが。

「やっぱテンションがなー。ついていけないっすわ」
「ババアかよ」
「否定できん」

予鈴を聞いてよっこらしょと立ち上がったが、ますますババくさいな。まだぴちぴちなのに。これはヤバい。女の子にもおっとりした子がいればなーと言いながら、二人に別れを告げ教室に向かった。
そもそも周りを見てないから、どんな子がいるか把握してないんだけどね。コミュ障を拗らせすぎて、教室内では誰とも目線を合わせない。たぶん顔見ても見覚えのない子とかいる。

午後からの授業は、くノ一らしい色の授業だった。色仕掛けとかそんな感じね。花道とか茶道とか、花嫁修行とも言える。今日はファッション力を鍛えるらしい。
「潜入任務で一般人に紛れるためには、その場その場に合わせた着物を選ぶことが大事です。今日はテーマに合わせて、小物も含めて着物一式をコーディネートしてみましょう」
はーい、と元気よく返事をした女の子たちは、元気よく二人組を作っていく。そう、コーディネートとかの授業は、相手に着せ合うのが基本なのだ。フジちゃん? もちろんガン無視! 一人でやるよ!
だって一緒に組んでくれる子いないんだもん。と言い訳しつつ、適当に前のスペースに並べられた着物を見ていく。今回のテーマは観光地の温泉街に湯治にきたいいとこのお嬢さん、らしい。ふーん。見たことないわ
かわいらしい着物はすぐに持っていかれてしまうので、残ってるのは地味なものばかりだ。そもそも服のセンスなんてものは持っていないので、ぼっちはぼっちらしく地味にやり過ごすことにする。いかん、最近どんどん思考が根暗になっていく……でもぼっちだからどうしようもない……。
涙がちょちょぎれそうなのを堪え、適当に小物を揃えようと目を向ける。と、あの、と小さく声をかけられた。

えっ、えっ!!?
と慌てて振り向くと、見覚えのあるようなないような、黒髪の女の子が立っている。えっ、どうしたの? 私なんかした? ごめんなさい!

「えっと、どうしたの?」
「あ、あの、えっと……」

コミュ障モードを押さえつけてなんとか喋ると、相手もなんとコミュ障らしい。大丈夫かこの子。

「あの、林悟さんっ、その、よかったら、一緒に、やっ、やってくれま、せんか……っ?」
「えっ、えっ!!?」

話を聞くと、彼女は普段はよいが、二人組を作るときはよくあぶれてしまうらしい。哀しい。うん。ぼっち仲間だ!! 仲良くしようぜ!!
なんて言ったわけではないが、喜んでお誘いをお受けした。はーー、生きててよかった! 素晴らしい! 彼女は大人しそうな子で、コミュ障にとても優しい人材である。是非とも女の子の友だち第一号になってください。末長く仲良くしてください。
ちなみにもちろん彼女の名前は知らなかった。だが素直に聞くと私が同級生の名前を覚えていないことがバレてしまうので、必死に彼女の持ち物に目を凝らす。

「えっと、ヒナタ、ちゃん?」
「はいっ」
「観光地の温泉街とか行ったことある?」

日向って、でっかい屋敷に住んでて分家もいっぱいいる木の葉有数の旧家。つまりお嬢さま!今回の課題は勝ったなこれ!!
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