平凡に生きたい

□アカデミーに入った
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両親が忍者、ついでに父方の家系は家特有の秘術持ちという私は、覚悟していた通りにアカデミーに通うことになった。うん、まあ知ってた。

ただ、思っていたのとは少し違って、入学前から父に修行をつけられる、などということは特になかった。秘術についても、存在は知っているがどういうものかはまるで知らない。一度、父にそのことを聞いてみたことがあったが、「うん、フジがもうちょっと、忍のこととかお勉強してからにしような」と何も教えてもらえなかった。そんなにすごい秘術なんだろうか。それで何かに巻き込まれたりしたら嫌だぞ私。

アカデミーの入学式は、昔、一度目に参加したものと違った。特に着飾るわけでもなく、父と一緒にアカデミーの教室に入って、適当に席につく。時間は開始直前だったらしく、私たちが座ると同時に、前の扉から数人の先生らしき人たちが入ってくる。


「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!これからみなさんは、立派な忍者になるために、様々なことを学んでいきますが……」


特に華々しい様子もなく、ほのぼのとした雰囲気で入学式は進んでいった。

ありきたりな文句と、アカデミーの簡単な規則を述べた後、親は残して生徒たちだけが移動することとなった。「また後でな」と手を振る父に振り返して、別の教室へ移動する。そこでは、先生や生徒たちが自己紹介したり、これからどんなことを学んでいくかをわかりやすく説明されたり。

そうして、次の日からは普通に授業が始まった。

うん、まあ、ありきたりであった。


と思うじゃん?

いや、ありきたりなんだけど、ありきたりなアカデミー生活を送り始めたのだが、このフジちゃんには問題があった。


友だちが、できない。


机に両肘をついて口元を隠しつつ、十数人の女の子がはしゃぐ教室内を、眼光鋭く見回す。

私以外の女の子は、たいてい数人で固まり、きゃっきゃきゃっきゃとはしゃいでいる。常に。
常にだ。朝のおはようから夕方のばいばーいまで常に数人で固まりはしゃぐのだ。

見た目に引きずられつつも一応は大人を経験した精神年齢である私としては、とても入れなかった。無理。テンションがついていけない。

グループに入らないことは、子どもの群れの中において、友だちが作れないことを示す。

いや別にね? 友だちがいなくても特に困らないし、授業中とかに「誰かフジちゃんと組んであげてー」と先生に言われるくらいだし、別にそんなほんとね? 困ったりなんかしてないよ? ホントだよ? ホントだもの。


というようなわけで、アカデミーで私は一人で過ごしている。昼休みは屋上で一人でご飯を食べる。そのまま寝て授業に遅刻することもままあるが。


そんな日々が続いたある日。いつものように屋上で昼食を食べていると、屋上の扉が勢い良く開いた。へあっと出た私の声には、貯水タンクの上にいたためもあるのか、屋上へやってきた子たちは気付かなかった。

勢いよく飛び出してきたのは男の子四人で、飛びつくように扉を閉める。

「あークソッ、撒けたか?」
髪をオールバックにしてまとめた男の子が息を切らしながら扉に耳をあて、人が来ないかどうか確かめている間に他の三人はすでに座りこんで、ほっと息を吐いている。
「だーっもう!疲れたってばよ!」
そう叫んで大の字に寝転んだ金髪の男の子に、あ、と思った。彼だけは覚えている。うずまきナルトだった。
うずまきナルトの存在は、実はすでに認知していた。私が彼と同じ世代だということも。
他に、まるまると太った男の子と、犬を連れた男の子がいて、もしかして彼らはあの話に出てきていたかもしれないと思ったが、やはり思い出せない。ついでに言うならば彼らの名前もわからない。
おそらく同じ学年であり見かけたことは何度もあるはずだが。なんかごめんね、友だちいないから人の情報とか入ってこないんだ。悲しい。
彼らの会話に耳をすませていてわかったが、先生から逃げてきたらしい。何か怒らせるようなことをしでかしたのだろう。あそこでお前が、うんたらかんたらと罪をなすりつけあっている彼らに、仲が良いなあと思いつつ、気配を消してのお昼ご飯を再開した。
私が食べ終わるころには、彼らの言い争いも終わっていて、じゃー戻るわ、と四人のうち二人去っていった。
「じゃーな、シカマル、チョウジ」
「チョウジは昼飯食べ過ぎるんじゃねーぞ」
なるほど、おそらくオールバックの子がシカマルらしい。チョウジはたぶん太った子だろう。特に知りたいわけでもなかったが、名前を教えてありがとう二人。
その後、シカマルくんとチョウジくんは、そこで昼ごはんを食べ始め、私は彼らが食べ終えて去るまで寝転がり、雲の数を数えていた。平和だあ。
彼らとの関わり?特に生まれなかったです。
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