黒子

□骨塔へ投げた花
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×××と君は言った。
僕の手の中でそう言った。
僕の手は冷たかった。
君の喉は温かかった。
君は観念しているようだった。
必死に足掻かなかった。
僕が力をこめるごとにただ苦しそうに息をもらすだけだった。
けどかすかに微笑ってた。
僕はさらに力をこめた。
彼女はいよいよ変な音を出し始めた。
彼女の首は細かった。
窒息する前に首の骨が折れそうだった。
僕は急に怖くなった。
最初は出来心だったのだ。
君の首を絞めてみたい。
いつもの何かを悟っているかのような微笑みを歪めたい。
優しく透き通った声を醜く喘がせたい。
それは願望ではなく、出来心だった。
気づいたらこうなっていた。
君の白い喉元に僕の手がかかっていた。
君は分かっていたかのように、微笑んでいた。
その顔が気に入らなかった。

彼女はとうとう動かなくなった。
やっぱり彼女は微笑んでいた。
手を離したら簡単に倒れた。
頭蓋の音が響いた。
長いスカートが花びらのように散った。
彼女の首には赤い赤い痕があった。
僕は彼女の髪を撫でた。
もうその喉は何の音も発さないのだろう。
彼女はなんの表情も作らないのだろう。
僕の心は何かを悟った。
頬が温かかった。
ああ、彼女が僕の頬に触れているのか。
僕はゆっくり目を閉じた。







『骨塔へ投げた花』

(だって彼女が止めないでって言ったから)




12/07/29

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