dream
□個として見て
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朝日が昇る。
金色の光がさびれたアパートを照らした。
刻は震えるまぶたを開ける。
まどろみの中、明るく日差しが差し込む窓を確認した。
「………晴れたカ。」
寝ぼけた頭を起こして、ふあっとあくびをした。
寝癖の付いた頭をボリボリと掻く。気だるげな瞳が瞬く。
(うあー……スゴイ寝癖できてル…)
いきなり気分的にがた落ちした。
大神たちに見られる前に直したい。
ていうか見られたくない。見られたが最後、1ヶ月はいじられる。
……羊の恨みもあるし。
なかなかに大変な身なのだ。
刻は自分の体を覆う布団を押しのけた。
夜中主人を暖める役割を果たした布と綿の塊は、かわいそうにグシャグシャになって相棒の敷き布団からややはみだして床に転がった。
立ち上がり、背伸びをして関節を伸ばす。
裸足のまま、刻は自室のドアをあけた。
見慣れた狭い廊下が広がる。
「……さあ〜今日こそ修行であのムッツリエロ神を追い越スっぶへぼ!?」
情けない叫びを挙げたのは、何かぐんにゃりしたものを思いきり踏んだから。
頭が瞬時にそう認識した。しかし、わかってはいても…
ずしゃあああああああ。
顔面から思いきり転がった。万歳のポーズで。
身体のあちこちが擦れて熱くなる。
「…………」
沈黙。
「………」
沈黙。
「……」
沈黙。
「…」
「…痛たたたたたタ!?
こんにゃろ…てめっ遊騎!!廊下で寝るナって何回も言ったダロ!!」
怒りが一気に頂点に達する。
思わず遊騎の胸ぐらをつかみ、ブンブン揺さぶる。
その反動で、遊騎の白い髪がふわふわと舞う。
白い?
ふわふわ?
赤とボサボサの間違いじゃねーの、とそう思って遊騎の顔をみた刻は、叫びを挙げることになる。
「ぎぃいやあぁぁああああ!!」
朝の渋谷荘にそれよく響いた。