黒執事

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いつだったか、可愛いあの子に

「一緒にお風呂に入ろう」

と言われた日、




わたしはショックで

何も言えなかった。










「ナマエちゃ〜ん」


無邪気にわたしの名を呼ぶ可愛い子。

わたしたちの、妹



笑って、なぁに?と返すと
嬉しそうに笑う顔が私を凍らせる


「一緒にお風呂に入ろう」




背中にあるのは、消えない傷痕

過去が私を苦しめる





やめて、

思い出させないで



折角忘れようとしていたのに


どうしてそんなこと言うの






違う

違う


この子は何も悪くない





「ナマエ、ちゃん...?」



か弱い声に、ハッと気が付いた。



嗚呼、

あなたは何も知らないから


知らなくていいから


どうかこの罪を


生きているこの罪を


この子には教えないで...







「ごめんね」



わたしにはこの一言が


いまは何よりも罪深い気がした。




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