黒執事
□#07
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厨房には何も残っていなかったため、結局スープだけの食事を終えたナマエは再び自分のテントへ戻って作業を始めた。
昨夜会った、あの絵に描いた様な執事がもう一人連れてくると言っていた。彼らのことが気になって仕方がなかった
受かればいいんだけどな、と
ナマエは思った。すると外から、
「かっこいい~!」
「可愛いじゃない」
「何するの?」
「ダーツですって」
などという話し声が聞こえた。
おそらく彼らが来たのだ
(ダーツ、ってことはダガーかな)
ナイフ投げの彼はやたらと自信家だから、ライバルなんか現れたら大変だな、と思いながら、ナマエも野次馬に紛れるためにテントを出た。
外は物凄い人だかりで、その中心にいるであろう二人組の姿は車椅子のナマエからは僅かも見えなかった
そしておそらく、その傍にいるであろう団長も…
「きゃ~すごーい」
わっと歓声の様な声が中心から聞こえてきた。一体どんなスゴ技を披露しているのだろう、と気になったが、いずれにせよこの調子でいけば彼らは順調に試験をパスするだろう。
それならば焦らずとも自分のところに来るだろう
それから暫くし、案の定見慣れない二人組を連れてジョーカーが来た。
「ナマエ~、噂の新入りやで」
衣装を縫っていた手を止めて顔を上げると、昨日の背の高い紳士と、彼とは対照的な小柄な綺麗な男の子
「こんにちは、本日からお世話になります」
紳士、もとい執事が丁寧に腰を曲げてそう言うので、ナマエもお返しに頭を下げて こちらこそ、と言った。
「こっちのちっこいのが、あんさんが連れてきはった子や」
ダーツも綱渡りもできたんやで、と言いながらその子の肩をポンポンと叩いた。
「よろしくね」
ナマエが笑うと男の子は握りしめた両手を太ももに置いて緊張した面持ちを浮かべながら
、よろしくお願いします とお辞儀をした。