黒執事

□#08
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「フィニアンは、お屋敷で働いていたの?」

「えっ」



フィニアン、もといシエルの体の採寸を測るためにナマエは彼の背中に腕を回している

もちろん服を着た上で、だ。


そんなときだった
彼女がそう尋ねたのは。



「えっと、そ、そうです…」



思わず一瞬動揺するも、なんとかその質問に言葉を返す


この際どもっていたのは緊張のせい、ということにしておこう…




「大変だったでしょう…」



ぱっと腕をほどいたナマエは、どことなく悲しみを含んだ表情を浮かべていた



「い、いえ…」



そんなには、と続けるつもりで口を開くも、それは途中で咽に引っ込んだ。


というのも、ナマエが先に口を開いたのだ。



「ここには色んな事情の人が集まっていてね。皆がみんなそうってわけじゃないんだけど、中には君くらいの年で入った子もいるの」


「そう、なんですか…」



すると彼女はにこっと笑って



「遠慮しないでね!これからは家族なんだから」



私の方が年上だけど、敬語もいらないよ
と言いながらメジャーを仕舞う。



「はい これ」


すっと手渡された黒いもの



「?」


「衣装よ。大きさはぴったりのはずだけど…嫌?」



ゴテゴテしたフリルの衣装を素直に受けとるも、背後でセバスチャンがクツクツと笑いを堪えているのが手に取るように分かった。

しかし自分は新入りの身分だ
我が儘なんて言えるわけもなく


「いえ!素敵な衣装ですね」


と在り来たりな思ってもないことが口を出た



「本当?よかったぁ。うちには君くらいの背丈の子がいなくてね、随分使っていなかったものだから…」



たしかにうっすらとだが埃っぽい洋服箪笥の匂いがする。しかし気にするほどでもなく



「全然」


後ろでセバスチャンの笑いを堪える声が微かにして殴りたくなった

此処にいても仕方がないと腹を括り、シエルもといフィニアンはカーテンで仕切られた簡易更衣室へ足を向けた





のちに彼がシエル改めフィニアン改め、スマイルと呼ばれる様になるのは数時間先のこと

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