井の中の蛙

□ソトノセカイ
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「あきれた…」

私はポツリと呟いた

呟いたところでどうなるという訳ではない

誰も私の言葉なんて聞こえない

言葉どころか姿さえとらえる事を出来ていないだろう

誰も私を知らない

誰も私を見ることが出来ない

そんな中で私はこのセカイで
何百年も生きてきた

そしてニンゲンの全てを知った
知った故に
ニンゲンの全てに失望した

何も学ばず
同じ過ちを何度も繰り返す

なんと憐れで馬鹿な生き物なのだろうか

ニンゲンはある時私を奉る
神社を建てた

神社は私の家と同じ

ゆっくりと身体を休める場所となったのだ

そしてその神社にニンゲンは通いつめ
私をカミサマとして崇めた

もちろん私は
それに対して嫌な気などさらさら起きなかった

崇拝は直接、私の力の源となった
私はその力でニンゲン達に様々な恵を与えてきた


それで私とニンゲン達の天秤は釣り合っていたのだ


だが…ニンゲン達は
私を見放した

自分達の欲望の為だけに
戦争をおこし
そして神社をも潰した

この世にニンゲン以上の存在等いらないと
言わんばかりに

私はそんなニンゲン達に失望した

もうニンゲンなどに恵など与えないと決めた

だが一部のニンゲンが
私を必死に崇拝していたから
一度だけニンゲンを許してあげる事を決めたのだった

たった一度だけ許した

それは私の情けだった

今までの崇拝を思えばたった一度の過ちを
許さないというのは
あまりにも無情だと思ったからだ

…けれど…
やはりそれは間違いだった

ニンゲン達はまた私を裏切った…

もうニンゲンに期待などはしない
ニンゲンに恵など与えない
絶対に
絶対に


そして私は気付く
こんなセカイに居たって
自分が傷付くだけだと言う事に

ならば帰ろうか
私の元いた

あの

井戸の中に

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