井の中の蛙

□私ノセカイ
1ページ/1ページ


結果から言おう

私は井戸の中に帰った

ソトのセカイに失望と言う感情を置いて

井戸の中は相も変わらず暗く狭い
変わった事と言えば
内壁にコケが生えたという事位だろうか

それ以外はホントに何も変わっていない

今まで生きてきて
はじめの内は一人が寂しいと感じた事があった

だが
何百年かすると一人にも慣れていて
別に寂しいと感じる事はなくなった

だから今までで
誰かと一緒にいたいと感じたのは
本当にはじめの内で
あとは一人が当たり前になっていたのだ


けれど、ここに戻って来て
ふと感じた

寂しいという事に


ソトのセカイでは
私の事が見えていなかったが
ニンゲン達が毎日私の周りにいた
楽しそうに話していた


その会話にまざる事はできずとも
会話を聞くのは楽しかった


どんなに下らない話しでも
楽しそうに話すニンゲン達を眺めるのが好きだった

…だからこそ
何もないここは寂しいと感じたのだろう


「私は…何なのだろう…」

また一人で呟く
誰にも聞かれない言葉を
虚空に発する


自分勝手なのは
私の性故仕方ない

でも…
カミサマと呼ばれた私は
何をする為に生まれたのかが
わからなくなる

ソトのセカイで恵を与えているならまだしも
私は何にもないこんな所で
一人でいる

…わからなくってもいいか…


何だか色々な事が面倒臭くなってしまった


そろそろこのセカイ自体に
飽きが来てしまった

普通のニンゲンならばセカイに飽きなど来るはずなどない

飽きる前に死んでしまうのだから

だが私は違う
私自身さえ望めば永久に生きる事が出来る

だからこそ
今まで沢山の事を学んだ

学び、学び尽くした結果がコレだ

私を包み込むのは
例えるなら何度も読み返し
内容を覚えてしまった本のようなもの
そんなものが私の周りには広がっている
内容を知っている本を
再度手に取る者などいない

私のセカイは完全につまらないものとなってしまった

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ