るろうに剣心*short*
□おいてきぼり。
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ーおいてきぼり。ー
「おい壬桜。この書類やっとけ」
そう言って煙草をふかしながら、明らかに1人では到底終える事のできないであろう量の書類を斎藤は平然とした顔で壬桜の机に置いた。
「ちょ…いい加減にして。張あたりにでも頼んでよ。こんな量…斎藤も書類整理ぐらいしてよ」
「俺は外回りで忙しいんだよ。」
それに張は役にたたん、と付け加え、紫煙をその胸に溜め込むと、壬桜の部屋だろうとお構いなしにそれを吐き出した。
壬桜は横目でその光景を見つつ、相変わらずな斎藤の横暴さに小さくため息をついた。
壬桜自身、煙草など全く吸わないが、当然のように斎藤のために灰皿がこの部屋に置かれだしたのはいつのことだろうか。
ぼうっと壬桜はそんな事を考えながらも、書類の束と目の前の身勝手な男に対し少々苛とした。
壬桜だって密偵なのだ。なのに斎藤が書類整理などを押しつけてくるせいで、任務は最近もっぱら壬桜ではなく、張が担当することが多い。
全ては上司である斎藤が決めているのだ。
壬桜は斎藤に頼りにされてないと言うより、なぜたが置いてきぼりを食らったような思いを抱いていた。