るろうに剣心*short*

□お戯れといきましょう
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「あ、今入らない方が良いと思いますよ。」

背後から声をかけられ、志々雄さんの部屋の扉から手を離す。
声に振り返ると何時もと同じ笑顔を浮かべた宗次郎が立っていた。

「もう志々雄さん寝たの?」

「寝てませんよ」

「じゃなんで?」

そう聞くと宗次郎は笑顔はそのままに声音だけ困ったように答えた。

「それは僕の口からはちょっと…扉に耳あてたら分かりますよ」

楽しそうに笑う宗次郎。
とりあえず、言われた通りにしてみると、おそらく由美さんのものであろう断続的に聞こえる艶っぽい声が微かに聞こえた。

「あー…そういうことか」

志々雄さん達はつまりは今、行為の真っ最中らしい。

確かにこんな中部屋に入るなんて空気読めないにもほどがある。

私が宗次郎の言葉に納得すると、『ね?』と面白そうに首を傾げた。

「でも志々雄さん達もよくやりますねー」

「確かに…でも困ったなあ」

志々雄さん達が互いに愛し合うのは結構だが、志々雄さんの指示で地方を回ることが多いので、あまりこのアジトにいることがない私には自分の部屋がない。
だから、帰ってきたときは志々雄さんの部屋で寝かせてもらっているのだが、この場合それは難しそうだ。

「困った?…あぁ、そっか壬桜さんいつも志々雄さんの部屋で寝てるんでしたね」

「うん。いや、まあさ、予定より早く仕事終わって考えなしに帰ってきたのが悪いんだけどさ」

「まあ仕方ないですよ。…あ、そうだ!寝るとこないなら、僕の部屋で寝ましょうよ」

「え、そんないいよ」

「えー、なんでですか?」

名案とばかりに宗次郎が言ったがあっさり私が断ったので、宗次郎は不満そうな声をあげた。

「空き部屋借りて寝るからさ、大丈夫。」

志々雄さんに会いたかったし志々雄さんのふかふかな布団で寝たいのは山々だが、空き部屋は十分にある。わざわざ宗次郎の部屋で寝なくても事は足りるのだ。

「空き部屋で寝るくらいなら、僕の相手ぐらいしてくださいよ。僕いつもこうなると1人蚊帳の外状態なんで」

「ははっ。まあ、確かに。」

「じゃあ、決まりですね。行きましょう壬桜さん」

宗次郎は私の手をにぎるとまるで子供のように無邪気な顔して笑う。
この笑顔は本物だな。いつもの作り笑いじゃない。
つられて私も笑うとつないだ手はそのままに2人で宗次郎の部屋へと向かった。
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