るろうに剣心*short*

□しあわせはその腕のなか。
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拾われた時の私は、世界のすべてを憎んでいるような、そんな目をした可愛げのない子供だったそうだ。


「おい、壬桜さっさと晩飯作れ」

「今は無理です。」

「無理って、師匠が腹空かせてるってのに…薄情な弟子だな。」

師匠、もとい、比古清十郎がぼやくので、仕方なく絵を書く手を止め振り返った。

「誰のお陰で、うまい酒が呑めてるのか、きちんと考えてから発言してください、師匠」

「…っち」

師匠は、あからさまに嫌な顔して舌打ちした。まあ、師匠が高い酒をたらふく呑めるのも、私が浮世絵を描いて町まで売りに行っているからなので、コレに関しては師匠も、反論出来ない。

「嫌な弟子だ…」

「あら、何ならコレ描かなくても私はかまわないんですよ?」

「ちっ…生意気になりやがって。」

「かわいい弟子が師匠の為に働いてるんですからもう少し待ってくださいよ、すぐ終わりますから」

「…早くしろよ」

「はいはい」

師匠は飯が出来たら起こせと言ってその場に横になった。

まったく自由というか、身勝手な師匠だ。

でも、こんな師匠だが、一応私の命の恩人だ。

物心ついてすぐ、親に捨てられ、盗みやらなにやらをして何とか生きていた私は、生きている事に意味などあるのか分からなかったが、死ぬのが怖くてともかく必死に生きていた。

そんな時出会ったのが師匠。
死ねない死にたがりの私を拾い、盗みをやるぐらいなら剣術でもしたらどうだと言って、剣術を教えてくれたのだ。

気付けば、一緒に剣術をしていた、剣心は独り立ちをしてしまったから、一度は自分も飛天御剣流の後継者になるつもりだった。でも師匠はもう誰にも継がせる気は無さそうだったので諦め、こうして師匠の世話をする生活を続けている。
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