少女

□悪夢
1ページ/1ページ

―――ある日私は夢を見た。とても恐ろしい夢だった…。―――

その日はいつものように過ごしていた。いつもの時間に起き、いつものように朝食を食べ、いつものように身仕度をし、いつものように友達と登校、いつものように学校生活をおくり、いつものように下校。いつものように夕食を食べ、いつものようにお風呂に入り、いつもの時間に寝る…。
特に変わった事はしなかった。

唯一いつもと違った事といえば、夢を見た事位だろう…。久しぶりに見た夢だった。


しかしその夢は、とても恐ろしい夢だった…。


何もない、真っ白の世界の中に私は座っていた。辺りを見回してみるが何もない、誰もいない。私は一人でボーっと座っていた。

すると、急に友達が現れた。楽しそうに話している。

私の存在には気づいていないようだった。私はただそれをボーっと眺めていた。

しばらくすると、皆が何処かへ歩き出した。
私は闇の中に一人取り残されるような恐怖を感じ叫んだ。

「待って!置いていかないで!私を一人にしないで!!」

いくら叫んでも誰も振り向いてくれない。私の声が全く聞こえてないようだった。

皆、私は存在しないとでもいうように話しながら歩いていってしまう。それがとてもつもなく悲しくて、恐ろしくて…。泣きながら、何度も何度も叫んだ。

しかし、私の叫びも虚しく、一人、また一人と何処かへ消えていく。

そして最後の一人が消えた後、今まで白かったはずの世界が急に真っ暗になった。

真っ暗な世界に一人取り残された不安、悲しみ、恐怖に押し潰されそうになり、私は泣き叫んだ…。


目覚ましが鳴り目が覚めた。短いようで、とても長い夢だった…。


―――この夢が恐怖への始まりの合図だなんて、知るよしもなかった…―――


この日もいつものように登校した。だがいつもとは何かが違う事に気がついた。周りの様子がおかしい訳ではない。自分の人への接し方がいつもと違うのだ。

相手の様子を伺い、話を合わせ、表情を作り、少しでも失敗すれば恐怖を覚え、喧嘩をすれば身体中に恐怖と痛みが走り…。

きっと夢のせいなのだろう…。「離れていってしまうかもしれない」という思いが恐怖となり、人との接し方を変えてしまったらしい。


「友達が怖い」いつしか私はそんな感情を抱くようになっていた。


無事1日が終わり、お風呂に入りながら、「どうせ楽しい夢でも見れば悪夢なんか忘れて、また元に戻れる。」などと考えながら、その日は早めに寝た。


しかし、その日見た夢は楽しい夢ではなく、前の日と全く同じ悪夢だった。

その次の日も、またその次の日も…。あの日から毎日のように同じ夢を診るのだ。

その度に私の恐怖は大きくなり、人への接し方も常に相手の様子を探るようになった。夜は寝つけず、睡眠不足で吐き気や頭痛、目眩に襲われる事もあった。

どこまでもどこまでも続く悪夢。

いったいいつになったらこの悪夢は終わりを告げるのだろう。

誰か私に気づいて…。私はここにいるよ…。誰か私をここから連れ出して…。誰か助けて…。

足がすくんで動けない私は誰かに助けを求めるより他はない。だから私は叫び続けるのだ…。

―――誰かが手を差しのべてくれる、その日まで…―――

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ