少女
□悪夢の終わり
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毎日毎日見る悪夢…。毎回同じことの繰り返し。闇に一人取り残される恐怖に怯える毎日…。日に日に人への恐怖は大きくなり、自分を見失いそうになる。
この悪夢はいったいいつ終わるのだろう…。
そんなことを考える毎日。
しかし、ある日突然悪夢は終わった。
―――あることをきっかけに―――
今日もまた悪夢の苦しさで目が覚めた。またか…。と思いつつ起き上がる。今日は体がだるく、頭痛がする。しかし学校を休む訳にもいかず、｢自分が自分じゃなくなるまえに、この悪夢が終わりますように…｣と、いつものように祈ってから身支度を整え登校した。
特に変わったことはなく、いつものように偽物の笑顔を貼り付け、相手の心をさぐり、その場に合った言葉をしゃべり、操り人形のように生活する。その度に、自分は人間ではない。と思い知らされ、絶望し、もがき苦しみ…。
そんな生活の中で唯一の救いは、親が寝た後にこっそりやっているチャットだ。ここではなりきりなど、キャラになりきるチャットを多くやっている。なりきりはいつも自分を創っている私にとっては得意分野だ。
ここでは皆相手の心をさぐり、キャラを創るため自分のやっていることに苦しめられることはない。本体に関することも関係ないし、相手の性格も分かりやすい。なにより、嫌になれば簡単に縁を切れる。
ここでは私を苦しめるものはない。私にとって唯一の救いの場所だ。
しかし、楽しい時間はすぐに終わってしまうもので、あっという間に寝る時間になってしまった。できることなら寝たくない。寝ればあの恐ろしい悪夢を見てしまう。でも寝なければ明日の学校の授業中に寝てしまうかもしれない。それは困る。
仕方なく私は眠ることにした。静かな中で寝ようとすると、色々考えてしまって眠れないため、いつも好きな音楽を聞きながら寝る。この日もそう時間はかからず寝ることができた。だが、やはり見る夢はいつもと同じ悪夢だった。
またいつもと同じように話が進み、一人闇の中に取り残される。
｢まただ…。また一人取り残される…。怖い…。早く…早く夢から覚めろ…｣
うずくまりながら何度も何度も泣き叫んだ。しかし、夢はなかなか覚めない。一人恐怖に怯えながら夢から覚めるのを必死に待った。
その時、目の前に何かが現れた。その部分だけが明るくなっている。恐る恐る俯いていた顔を上げると、そこには一人、人が立っていた。眩しくて顔が見えないため、誰だかは分からない。訳が分からずボーッとその人を見つめていると、その人は私に向かって手を差し出し、｢もう大丈夫だよ｣と、言った。その顔は笑っているような気がした。私は差し出された手に恐る恐る掴まり立ち上がった。
すると、その人は何処かへ向かった手を繋いだまま闇の中を歩きだした。私は置いていかれないように繋いだ手をしっかりと握り、その人の後に着いていった。闇の中を何処へ向かっているのか分からず不安でいると、その人は私の不安に気づいたのか笑いかけてくれた。すると、不思議なことに不安だった心が安心に変わっていった。
しばらく歩くと、先の方で何かが光っていることに気がついた。近づくにつれ、光も大きくなっていき、光に辿り着いたと思うと、急に辺りが明るくなった。驚きその人の方を振り向くと、その人はにっこりと笑って、
｢もう大丈夫｣
と言ったところで急に辺りが光り、眩しさに目を細めたところで目が覚めた。
何が起きたのか分からず起き上がったままボーッとしていた。いつもは苦しさのあまりに跳ね起きるのだが、今日は違った。私がいつも感じる苦しみはなく、とてもすっきりしていた…。
夢の中で見た人は顔がよく見えなかったため、誰なのか分からない。分かっているのは、その人の声や手、笑顔がとても優しくて、温かくて、安心できた…というくらいだ。私はもう一度その人に会いたくなった。
でも今のままでは会えない。今度会った時は本物の笑顔で｢ありがとう｣と言いたいから…。そんなことをボーッとしながら考えていた。
しばらくして、ふと思った。たまには人間を恐れるのではなく、信じてみるのも良いのかもしれない…。
―――窓から見た空は、キレイな快晴だった…―――