勇気を、下さい

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あのね、私、知ってるんだ。

ナツが送り迎えを嫌々してること。

きっと、私みたいにミラさんとエルザにお願いされたんだと思うの。

だって、送り迎えをしているとき、ううん、全ての時間、私の隣に絶対に来ない。

最初は勘違いかな、って思ってナツの隣に並んでみたんだけど…

ナツはすぐ私から一歩離れたらから、勘違いじゃないって気づいた。

それに、私とは必要最低限の会話しかしてくれない。

記憶をなくす前の私について聞いたら、ナツはいっつも悲しいような、怒ってるような、複雑な顔をする。

それがすごい悲しくて、"私" についてなにも聞けないでいる。

きっと、私はナツに嫌われてるんだと思う。

そう思うと少し、胸が痛くなるけど、まだ大丈夫。

私は、大丈夫。

「みんな、おはー!」

今日もハッピーとたわいのない話をして、ギルドに到着した。

今日もナツは無言だったけど、気にしない。

「シャルルだ!シャルルーおはー!」

「朝からうるさいわよ、青猫!」

「シャ、シャルルダメだよ、そんな言い方!」

「ふん。このくらいで、ちょうどいいのよ。」

シャルルを見た瞬間、直ぐ様文字どうりシャルルの元に飛んでいくハッピーを見て、微笑ましく思う。

こういうとこは、相棒にそっくりだと、いつも感じる。

ナツも、リサーナを見かけると、ううん、見かけなくても探して、リサーナのとこに駆け寄るから。

その様子を見ると、なんとも言えない気持ちになるけど、これが何だか私には分からない。

ただ、これは開けちゃいけない、箱のようなものだと感じる。

ふとさっきナツのいた方に顔を向ければ、すでにそこにナツはいなくて。

カウンターの方に目を向ければ、リサーナと楽しそうに話しているナツを発見した。

リサーナには、私が見られない、ナツの笑顔が向けられている。

笑顔だけじゃない。

拗ねた顔も、照れた顔も、私が見たことない表情全てが。

リサーナに向けられている。

沸き上がってくる黒いモヤモヤには、見ない振りをして。

私はこの1週間で仲良くなった、ジュビア達のいる方へ足を向けた。


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