勇気を、下さい
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「ちょっと!ちょっと待ってよ!」
あの後、着替える暇もなく、ナツという桜髪の男の子に強引に手首を掴まれ、引きずられ、今は何故か森の中を歩いている。
さっきから、いろいろ質問はするが、ナツはなにも答えてくれなかった。
「何処に、行くのよ…。」
「あのね、ルーシィ、オイラたちはギルドに向かってるんだよ!」
小さく呟いた私の声に答えてくれたのは、ナツの頭上を飛んでいる青猫のハッピーだった。
なんでも、今ハッピーが空中を飛べているのは、"魔法"という力らしい。
それはハッピーに限らず、ナツや、私も使えて、私達はギルドの"魔導士"なんだと教えてくれた。
魔法を使ってみたいという、好奇心はあるけれど、私の魔法の媒介である鍵は、ナツが持っているので 今は使うことはできないらしい。
「ギルドってなに?」
「うーん、簡単に言えば何でも屋って感じです、あい。オイラたちのギルドは、妖精の尻尾ってとこなんだよ!ほら、見えてきた!」
ハッピーの言葉とともに、森を抜けて、ギルドらしき建物が見えた。
まぁ、想像してたより、少しボロかったのは、気にしないことにする。
「行くぞ。」
「え?あ、うん。」
再びナツに手首を引かれ、ギルドに向かっていった。
どうしてだろう。
ナツに掴まれた手首が、熱い。
そして、ナツの顔が見えなくて恐い、と感じる。
わからない感情を胸に、ギルドの扉は開かれた。
「おはー!」
「じっちゃんいるかー!?」
「えっと…、おはようございますで良いのかな?」
開け放たれた扉の先には、たくさんの人で溢れていた。
中は決して広くはないけれど、みんながみんな、笑いあって、すごく楽しそう。
「すごい…。これが、ギルドなんだぁ…!」
見たことも、感じたこともない世界に、胸が高鳴る。
でも、ここにいると安心するのは、前から私がここにいたっていう証なのかな?
なんて考えているうちに、ナツとハッピーはどんどんギルドの奥に進んで行ってしまった。
掴まれていた手首も、いつの間にか離されていて、なんだかそれをとても寂しく感じた。
「ちょっと、ナツ!ハッピー!待ってよ〜!」
さすがに、初対面の人たちの中で平気でいれるほど強くはない。
必死で奥に進むナツたちについていく。
その途中で、いろんな人に話しかけられた。