勇気を、下さい

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ピピピッ
と、目覚まし魔水晶の音で目を覚ます。
今日は珍しく目覚めがスッキリとしている。
昨日なかなか寝付けなかったけど、楽しみなことがあると早く起きれるのね、なんて実感する。

今日はエルザとハッピーとナツと、クエストに行く日。

今からもう胸が高鳴っている。

「さぁ、準備しなくちゃね!」

小さなキャリーバックを引っ張り出して、荷物を詰めていく。
何を持っていこうか頭を悩ませて、無難に携帯食料と、着替え、タオルだけを入れた。

荷物を詰め終えた後は、自分の準備だ。

とりあえず、デニムのショートパンツに柄Tシャツという、動きやすい格好にした。
靴はなぜかヒールがあるやつしかなく、悩みながら一番ヒールが低いブーツを履く。

鏡の前で最終確認をして、エルザに言われた通り、星霊の鍵をベルトの部分にくくりつける。

「よしっ!」

小さく呟いて、握りこぶしを作り、気合いをいれる。

私は、大丈夫。

期待と不安が入り交じった感情が胸の中で渦巻いている。

大丈夫。
きっと、助けてあげるからね。
きっと、思い出してあげるからね。
だから、待ってて。
待っててね、ルーシィ。

記憶がなくなる前の私のように、髪を結い、私は家を出た。




「あ!ルーシィ!おはー!」

「来たか、ルーシィ。おはよう。」

「おはよ!ハッピー、エルザ!」

妖精の尻尾の前で、胸に飛び込んできたハッピーを優しく受け止め、エルザとハッピーと合流した。

けれどいるはずのナツの姿は見えなかった。

「ルーちゃん!」

「ルーシィ!」

「うわっ!おはよ、レビィちゃんに、ジュビア。」

ハッピーと同様に飛び込んできたレビィちゃんとジュビアに吃驚して、思わずハッピーを落としてしまった。

痛い、とか酷い、とか言われてるけど、気にしない。

っていうか、いつの間にか私たちの回りには妖精の尻尾ギルド員 全員集まっていた。

「ルーシィ、昨日はちゃんと眠れましたか?具合など悪くないですか?」

「ちゃんと鍵もつけてるよね!忘れ物は無い?」

「だ、大丈夫だよ…。」

思わず引いてしまうほど熱心にチェックをする二人。

そんなに、心配してくれたんだと思うと、申し訳なくなる。

確かに心配してくれるのは嬉しいけど…。

やりすぎよぉ…。

世話を焼いてくる二人を、なんとかして引き剥がし、エルザたちと出発する時間になった。

「ではマスター、行って参ります。」

「…エルザ、ルーシィを頼むぞ。気を付けていってきなさい。」

「はい!じゃあジュビア、レビィちゃん、みんな!行ってきます!」

「気を付けてねー!」

「なにかあったら連絡してくださいよ!」

「シャルル!お土産楽しみに待ってて!」

「はいはい。期待しないで待ってるわ。」

全員に挨拶を終えて、歩き出す。

「ナツ!気をつけて、行ってきてね?」

「わかってるって。心配しすぎだっつうの!」

私から少し離れた場所でリサーナと話ながら機嫌よさそうに歩いてくるナツに、なぜか胸が痛くなったのを、私は気づかないフリをした。
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