勇気を、下さい
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バルゴに抱えられてるルーシィを見たとき、胸の中で渦巻いていたドロドロが全て消え去り、暖かいもので満たされていくのを感じた。
安堵のため息が自然と口から零れる。
強張っていた身体から力が抜けて、ようやく彼女が無事だという事実を受け入れた。
「バルゴがルーシィを助けてくれたのか?」
「はい。姫の危険を察知致しましたので、自分の魔力で門を通りました。」
「そっか…。さんきゅーな、バルゴ。」
「すまない、バルゴ。助かった。」
「ルーシィ、良かったよ〜!」
エルザもオレの隣で同じように安堵のため息を零す。
ハッピーにいたっては顔面全体を涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚しながら、喜びを全身で表していた。
「ナツ。私は依頼の薬草を採取して来る。…ルーシィを、頼むぞ。」
こんな状態で依頼を続けられないのはわかっていた。
1度受けた依頼を途中で放り出すような無責任なことはしたくなかったが、ルーシィのためなら、仕方ない気がした。
「わかった。エルザも、気をつけろよ。」
オレの態度にエルザはなにかを感じたのか、軽く頷いた後、小さく微笑んで進んでいた道程へと歩いていく。
「エルザ、頑張ってね〜!」
ハッピーの応援に手を上げて答えたエルザを見えなくなるまで見送った。
「…うし!じゃあ、帰るか!」
「あい!!」
バルゴに向かって自然に出した両手。
バルゴの消費魔力を少なくするとかそういうことは一切頭になかったし、ただ単にオレがそうしたかっただけだったと思う。
オレがルーシィの存在をただ感じ取りたかったがためにとった行動。
しかし、ルーシィを受け取るために投げ出した両手を、バルゴは一瞥しただけでルーシィを渡す素振りは見せなかった。
代わりにバルゴは、無表情のままオレのことを見続けた。
ただ見られているだけ。
それだけなのに、ひどく責められているような気がして、自然と視線がバルゴから遠のく。
ハッピーもこの異様な空気に気づいているはずなのに、自分は関係ないとばかりに呑気にルーシィの胸元でうずくまっていた。
見事に味方のいなくなったオレは、なにかを言おうと口を開き、結局はなにも言えずに、口を閉じる。
なんとも重たい空気がオレ達を包んでいた。