勇気を、下さい
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オレは今まで記憶の無いルーシィは、オレの知っているルーシィではないと思っていた。
このルーシィは違うルーシィなんだって、考えるようにしていた。
そうしないと、今まで過ごしてきたルーシィとの時間が全て消え去ってしまいそうで。
全てが、壊れていってしまうよで。
怖くて、悲しくて、辛くて…
自分を守るために記憶の無いルーシィを拒絶していたんだ。
それが、ルーシィにとってどんな影響を与えるのかもわからずに。
ルーシィがどんな気持ちになるのかも知らずに。
「オレ…本当に、大馬鹿野郎だな。今一番辛いのはルーシィなのに、自分のことだけ優先して、自分勝手に行動してた…。ほんと、最悪な野郎だ。」
本当はそんなことバルゴに言われる前にわかっていたはずなのに。
思い返してみれば、自分の行動や言動に嫌気がさす。
できることなら、一週間前の自分を殴ってやりたい気分だった。
「大丈夫ですよ、ナツ様。ナツ様がきちんと姫に謝って、もう二度とこんな愚かな過ちをしなければ、姫はずっとナツ様のそばにいれくれますから。」
「あい!オイラもそう思います!!」
ハッピーがバカみたいに笑って、おまけに普段表情が動かないバルゴさえ、微笑む。
そんな二人を見て、目頭がじんと熱くなる。
けれど今、オレが泣いていい時ではないと、下唇を噛んで涙を堪えた。
まだルーシィに謝ってすらいないけど、ほんの少しだけ許してもらえたような気がした。
「だからナツ様、姫のことを今後もよろしくお願いします。」
「おう!もう今度はぜってぇ間違えねぇ。約束する。」
「オイラもちゃんと見張っとくから、大丈夫だよ、バルゴ!」
オレ達の答えをバルゴは満足そうに頷き、腕に抱えていたルーシィをオレの腕の中に移動する。
腕にかかる重みが、温もりが、ルーシィがここにいるのだと、ここで生きているのだと教えてくれいて、なんだか泣きたくなった。
泣きたくなるくらい、嬉しかったんだ。
「それではナツ様、ハッピー様、失礼します。…あ、そうそう。もし万が一今度姫を泣かせるようなことがありましたら、我々星霊一同からのお仕置きがあらますので、ご覚悟を。」
と、バルゴは最後に爆弾と魔力の渦を残して消えていった。
思わず頬が引きつってしまったのは、仕方のないことだろう。
でも、きっと、いや、絶対。
そんなことは起こらない。
だってオレがずっとルーシィを守るから。
オレがずっとルーシィと共にいるから。
「ルーシィはオレ達といればずっと笑顔だもんな!なぁ、ハッピー!」
「あい!もちろんです!」
「じゃあ、任務も完了したし、帰るかぁ。」
「あいさー!」
もう二度とこの温もりを手放しはしない。
決意を固めて、腕の中のルーシィを、そっと抱きしめた。
続
2014.08.06
月菜