短編小説
□君に捧ぐ I love you
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暗闇に染まった街、静寂に包まれた住宅街。
そのなかでポツン、と灯りがついているアパートの一室があった。
そこはルーシィ・ハートフィリアと言う名の少女が住んでいる家。
現在は家主である少女の他に桜髪の少年が居座っていた。
二人は同じギルドのチームメイトであり、決して恋人同士などという関係ではない。
ではなぜこんな人が寝静まった真夜中に恋人同士ではない桜髪の少年がいるのか?
その疑問の答えは、簡単に解けてしまうほど単純だ。
桜髪の少年は少女の家に不法侵入をするのが好きなのだ。
いや、少女と少しでも長く一緒に過ごしたいのだ。
例え不法侵入するたびに、理不尽な暴力を受けても、力ずくで追い返されても。
それでも少年は少女と一緒にいたかったのだ。
その気持ちの正体を、少年は未だ知らず、少女の方は少年に対する好意を必死に押し込めていた。
私に望みは無い、ナツが好きなのは私じゃない…と。
しかし様々な苦難を共に過ごし、少女の気持ちは抑えきれないほど大きくなっていて。
少女は今日も、唇を噛み締める。
「なぁ、ルーシィ。もう寝ようぜ?」
「眠たいなら、帰ればいいでしょ?」
「つめてぇな…。」
こんなやり取りも、もう何回目だろうか。
早く帰って欲しいがために始めた執筆は全然進んでいない。
飽きて帰ると思ったのが、間違いだったのか。
少女は思考と執筆の手を止めて、ベットに身をのせた。
そして、窓を開け放つ。
入ってくるヒヤリとした風が、少女の肌を撫でた。
それが少女には妙に心地好くて。