獣道

□猫魂っ! cat.3 〜宿猫〜
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忘れたまま…?


「キラ?忘れたままって…」
「狩猫はね、僕と僕に関係している人から“僕”を消したんだ。痕跡も欠片も残さずに。」
「ひどい…」

ステラが、泣きそうになりながら聞く。

「キラ、いなかった事になってるの…?」
「うん。そして、今このまま死んじゃったら、本当にいなかった事になっちゃうんだ。」

キラは苦しそうに続ける。

「それに…もう1つ、僕には死ねない理由が、あるんだ。」
「理由?」
「僕の…大切な人…。“ラクス”。」





「らくす?」
「大切な…人…。」
「ぼんやりと、だけどね、覚えてる。彼女にも、狩猫の魂が宿ってる。」

僕は、

「彼女を探さなくちゃいけない。たとえ、彼女が僕を覚えていなくても、僕が彼女の姿を知らなくても、必ず。」












「ごめんね、二人共。こんな話、信じてっていう方が馬鹿らしいよね。」

申し訳なさそうに頭を下げるキラだが、二人は微笑みを浮かべた。

「信じる。」
「え…、でも…」
「私に出来る事なら何でもやるって言ったぞ?」
「でも…やっぱり危ないし…!!」
「お姉ちゃんなら…大丈夫。」
「そうだ!自分で言うのも何だが、運動神経はスッゴいんだぞ!!」

あっはっは!!と笑うカガリを、きゃーお姉ちゃんすごーいと拍手をするステラを交互に見ていたキラの目に、涙が浮かんだ。

「ありがとう…!」
「ほらほら泣くな!男なんだからシャンとしろ!」

カガリがわしゃわしゃと頭を撫でると、それに連動して視界がグラグラ揺れた。
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