寄り道 二本目

□Ocean is my world【前編】
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港町アルテミス。

そこで東インド会社の将校、アスラン・ザラ少佐は町の見回りに出ていた。


真面目で若く、顔立ちの整った彼は町民から絶大な支持を得ている。

現に彼が歩く度、町娘はきゃあきゃあ騒ぎ、気のいいおっちゃんからはオレンジを分けて貰っていた。


「いつ見ても、この町は賑やかで平和だな…」


分けて貰ったオレンジを弄びながら、ポツリと呟く。

「あの国みたいだ…」


父が東インド会社の幹部であったアスランは、幼い頃からこの役職に就くことを目標にしていた。

父のように、母を守れる力が欲しくて。



あの南の異国を、


守れる正義が欲しくて。









この賑やかな町を見ていると、いつも思い出す。



水平線の向こうに沈む太陽と、今も鮮明に覚えている、双子の王家の子供。



大人になったら、もう一度あの国を訪れたいと、そう願って。










そんな事を考えていたからか、通りの向こうでどの金髪よりも煌めく金を、見た気がした。









「…疲れているのか。」




こけに居るわけがない懐かしい少女が、瞬時に頭に蘇った自分に、自嘲の笑みを浮かべる。


そろそろ帰って報告書を書こう。

そうやって背を向けた、アスランの向こうで。











煌めく金が、確かにもう一度風に揺れた。




「…やはり、か。ビンゴだったな。」


金は言って、空を見上げて。


「…今夜、決行だな。」


そう呟きを残した事も、誰も気付くことは無かった。



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