寄り道 二本目

□365年分の奇跡 ―第1話―
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「おい!アスラン、指されてるって!!」


後ろから背中をつつかれ、アスランは微睡みから現実へと帰還した。

ハッと前を向けば、苦笑した教師。


「珍しいな、ザラがうたた寝するとは…」

「あ、その、すみません。」

「まぁいい。で、これは?」


スクリーンボードの一点を差され、反射的に答えた。


「革命家、アレックス・ディノ。」

「正解。革命家アレックス・ディノは、今から370年前、古代都市オーブの革命に成功した偉人で―…」


教師はそのまま授業を続けていく。

ふぅと息を吐くと、また後ろをつつかれる。


「あっさり答えるなよ、可愛げねーなー」

「ちゃんと授業を聞けディアッカ。」

「んなこと言ったって。アレックス・ディノっていやぁ教科書よりMSプレイヤーの俺達の方が詳しいだろ。」

「いいから聞け。」


ちぇ、という小さな悪態とチャイムが鳴るのは同時だった。


「それじゃあ今日はここまでだな。ファイルを転送するので、月曜までにレポートを書いてくるように。」

「うへぇ、マジかよ!」


悲鳴を上げたディアッカに、クラスが笑いに包まれる。

アスランも苦笑をしながら、微睡みの中で見た光景に想いを馳せた。











涙に濡れた、少女の琥珀を―…














「遅いぞ貴様ら!」


教室を出ると、隣のクラスであるイザークが眉をつり上げて仁王立ちしていた。


「わりーわりー!文句なら教師に言ってくれ!」

「待たせてすまない。」


三人連れだって、直ぐ近くのある施設へと向かう。


「アレックス・ディノについてのレポートを書けだってよ。何かかったるいよなぁ」

「だがある意味楽だろ。」

「そうだ!むしろ俺達には好都合だろうが!!」


三人共一目を惹く容姿だからか、道行く度に女性から熱い視線を送られる。

しかし元々朴念人の二人といつもは軽い性格のディアッカは議論に集中しているため、そんな事に気を配ってなどいなかった。


「そもそもアレックス・ディノがいなければ、俺達は今こうしてMSを使えなかったんだぞ!」

「わーってるって!耳元で怒鳴るなよ!」


ギャーギャーと騒ぐ二人を余所に、アスランは腰に下げた長方形の機械を施設内のある扉にかざした。


≪デバイス承認。“GAT-X303 AEGIS” 使用者はアスラン・ザラと認定。≫

「行くぞ二人共。」




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