寄り道 二本目
□365年分の奇跡 ―第1話―
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「親しみやすいんですよ!…それに、ハイネさんについて僕が言ったのは、固有名称付きデバイスじゃないって所です。」
「ああ、奴は凄い。」
ニコルの言葉に、イザークも頷く。
ハイネのデバイスは、ZGMF-X2000 GOUFIGNITED。
上位の量産式だ。
シンクロ率とスペックの差からか、勝負になると、必ずといっていい程に固有名称付きデバイスの方が圧倒的に有利になる。
デバイスが量産式か固有名称付きになるかは、それこそ才能だ。
だがハイネは、その概念をはね除けた。才能を努力で埋めた男だ。
「そこんところはうちのチームのミゲル先輩と同じだよな。そういやあの二人仲いいよな。」
「そういえばこの前ルナマリアさんが、ミゲル先輩がハイネさんに『彼女欲しい』と愚痴っていた所を見たそうですよ。」
「ミゲル先輩…」
自分達の先輩の切なる願いに、四人顔をしかめた。
「諸君、揃っているね…って、どうかしたのか?何故皆暗い顔をしている?」
とそんな時、丁度監督のラゥが入ってきた。
「まぁいい。それより緊急事態だ。ミネルバのハイネとミゲルが重症を負った。」
「え!?」
「MSの戦闘ですか!?」
いきなりの情報に、四人の緊張感が高まる。
MSは使用者、受け手の両方に対して安全であることで有名だ。
使用者は相手からの攻撃に対してバリアを起動させ、ある程度の衝撃を防ぐ。
MSを持っていない人間に攻撃をしようとすると、MS本体が受け手に対してバリアを展開し、傷も衝撃も与えない。
それによってMSを使用した犯罪はごく僅かなのだが…
「落ち着きたまえ。私達も混乱していてね…。とにかく今から病院に向かう。準備をしてくれ。」
「「「「了解!!」」」」
「いやー悪いな。まさかヴェサリウスチームのお前らまで来てくれるとは…」
タハハ…とベットの上で頭を掻くのは、オレンジの髪の男…ハイネ。
そのベットの回りには、少々呆れた顔つきのミネルバチームの面々。
「ラゥさん。」
「…どうしたアスラン。」
「重症の割には、何であんなにピンピンしてるんですか…」
「私も知りたい。」
げんなりしながらラゥと言葉を交わすと、隣のベットのミゲルがやれやれといった感じで肩を竦めた。
「いやな、運ばれた直後に…あのミーアが来て、『あたしを置いて死ぬなんて許さないんだからぁっ!!バカバカ、このMSバカ!大好きっ!!』と熱烈な愛の告白をされてだな。」
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