寄り道 二本目
□365年分の奇跡 ―第1話―
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「ミーアって…あのミーアか!?」
ミーアといえば今売れっ子のアイドルである。
アスランの幼馴染みの親戚であり、その幼馴染みのよきライバルとして何度か名前を聞いた事がある。
「同級生らしいっす。」
「羨ましいわよねー」
シンとルナマリアの呆れた声を受けても、ハイネは嬉しそうである。
「爆発しろこの野郎…」
ミゲルの恨めしそうな声が、小さくではあるが溢れた。
「ゴホン。…本題に入らせてもらおう。」
ラゥの咳払いに、緩んだ空気が引き締まった。
「君達は優秀なMSプレイヤーであり、そもそも安全なMSを使用している。にも関わらず、何故そのような怪我を負ったのか、その原因を聞いておきたい。」
ハイネとミゲルはちらっと顔を会わせた。
「三日前…、南の方にあるインフェトゥス山中で、何かの遺跡の入り口を発見しました。」
「それで、折角だから探検しようぜって事で、昨日ハイネと中に入ってみたんです。」
「そしたら、最深部みたいな所で…その…何て言うか、妙な奴と戦闘になりまして。」
「妙…?」
ラゥが顔をしかめると、ハイネもミゲルも腕を組んで唸る。
「何て言うか、強い…。」
「そう、強い。」
「そんでもって速い…」
「ああ、とんでもなく。」
「強い、と速い…」
曖昧な情報に、ますます顔を渋くするラゥ。
「ラゥ。彼等の証言は嘘じゃない。」
ミネルバチームのレイが心配そうに言うが、ラゥは手を振った。
「いや、私も嘘だとは思ってないさ。アレックス・ディノが革命を起こす前のテクノロジーだとしたら、我々が知らずとも無理はないからな。」
「確か…、彼はかつて遣えていた王家の家系を始め、オーブの文献も片っ端から燃やしたんですよね。」
「その通り。お陰で古代都市についての資料は非常に少ない。だから彼等が遭遇したのは、オーブ時代の遺産かもしれないな…」
「だとしたら…」
謎に包まれたオーブ時代の遺跡ならば…
「歴史的発見かもしれないな。」
「お、それ本当ですか?」
「じゃあ俺達、最初の発見者ってことで名前が残ったりしますかね?」
「あくまでそれがオーブ時代の物だったらの話だがな。」
アスランが極めて冷静に突っ込む。
「とにかく、この事は上にも報告しておこう。君達はゆっくり休んでくれ。」
ラゥに促されたアスラン達は、静かに病室を後にした。
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