寄り道 二本目

□トライアングラー ―プロローグ―
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どれだけ願っても、彼女は視線をこちらに移そうとはしない。


あの琥珀色は、今までアスランの人生には無かった。

太陽のような月。

月のような太陽。


そう形容するのが相応しくて。


だけど恐らく、このまま待っていたとしても、彼女はその顔を動かすことは無い。

夕日が沈むまで、絶対に動かない。


…そう直感した。



どうしようかと頭を回転させる。


思考がぐるぐると回って、どうすればいいか答えが中々出てこない。


やっとまともな回答がでたのは、夕日が残り三分の一程度まで沈んだ辺りだった。

こんか簡単な答えが出るまで、どんだけ時間をつかったのやら…




堤防に腰掛けている彼女に、とりあえず話しかけた。


「…何を見ているんだ?」


しかし彼女はこちらを振り返って、不機嫌顔で言う。


「お前…高校生か。」

「え?あ、ああ…」

「失礼な奴だな。こう見えても、私は21だ。」


プイッと顔を背けられる。

「失礼な奴には教えない。」

「え、ええぇっ!?」


と、年上…!?と狼狽えるアスランをチラッと見て、彼女はクスクス笑った。


「冗談だよ。…失礼なのは否めないが、無理に敬語とか使われるのも嫌だし。」

「あ、う、えっと…」


いつまでも狼狽しているアスランに、彼女は悪戯っ子のように笑いながら訊いた。


「何歳に見えたんだ?」

「う、あ…えーっと…」


羞恥と罪悪感からか、顔を真っ赤にして俯き、「と、年下…。…17、とか…」とぼそぼそ言う。


「じゃあお前18か。…お前は、制服着てなきゃ普通に私より年上に見える。」

「…それって老けて見えるって事か?」

「誉め言葉だよ。大人に見えるって言ってんだ。ちょこっとは喜べ。」


ケラケラ笑う彼女の隣に、何となく座ってみる。

夕陽が水平線に完全に沈みかけ、オレンジ色の光が眩しい。


「お前面白いな!…名前は?」

「…アスラン。アスラン・ザラ。」

「へー。私はカガリ・ヤマトだ。」


よろしくな、と差し出された左手の薬指。

…シンプルな、何も付いていない指輪。


「…結婚、してたんだ。」


何故か感じる大きな落胆。


「…ああ。相手は…半年前に……さよならしたんだけどな。―…永久に。」


ザ…ザンと、波の音が響く。

それと同時に、彼女―…カガリの口から、小さな息が漏れた。


その息は、「キラ」と聞こえた。

















それが“カガリ・ヤマト”との出会いだった。










プロローグ 終


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