寄り道 二本目

□Re:Re:月光花
5ページ/14ページ





「危篤…?」


こいつは何を言っているのだろう?

汗を流して息を整える伝令役を、そんなぼんやりした思考で見つめた。


「は、いっ…!今朝、お倒れに…」













ど う し て












「っ!!」











回りの声など聞こえない。


ただ、彼女の命が消えかかっているという情報に嘘などなく。


しかしそれが嘘であればいいと願った。











馬を走らせ、なんとか日が沈んですぐに王都に辿り着く。


城に入るなり、アスランはある人を捜した。











嘘だ。


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。



時間は山ほどあるはずなのに。




山ほどなければならないのに。






ふと、廊下の向こうに黒い髪。





「シン様ッ!!」








彼女の弟君であるシンは、驚いたようにこちらを見た後、すぐに視線を前に戻した。


その態度が彼らしくなく、苛立ちながら彼に歩み寄る。


「シン様!!カガリは…」

「口をわきまえろザラ元帥。王族である姉上を名前で呼ぶなど、言語道断。何しに戻った?任期はまだ一週間あるぞ。」


冷たい、突き放す言い方。

ずっと本人が嫌がっていた“王族”としてのシンがそこにいた。











―…戦慄が走る。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ