寄り道 二本目
□Re:Re:月光花
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「危篤…?」
こいつは何を言っているのだろう?
汗を流して息を整える伝令役を、そんなぼんやりした思考で見つめた。
「は、いっ…!今朝、お倒れに…」
ど う し て
「っ!!」
回りの声など聞こえない。
ただ、彼女の命が消えかかっているという情報に嘘などなく。
しかしそれが嘘であればいいと願った。
馬を走らせ、なんとか日が沈んですぐに王都に辿り着く。
城に入るなり、アスランはある人を捜した。
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
時間は山ほどあるはずなのに。
山ほどなければならないのに。
ふと、廊下の向こうに黒い髪。
「シン様ッ!!」
彼女の弟君であるシンは、驚いたようにこちらを見た後、すぐに視線を前に戻した。
その態度が彼らしくなく、苛立ちながら彼に歩み寄る。
「シン様!!カガリは…」
「口をわきまえろザラ元帥。王族である姉上を名前で呼ぶなど、言語道断。何しに戻った?任期はまだ一週間あるぞ。」
冷たい、突き放す言い方。
ずっと本人が嫌がっていた“王族”としてのシンがそこにいた。
―…戦慄が走る。
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