寄り道 二本目
□Re:Re:月光花
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「私は…っ、俺はカガリが危篤だと聞いて―…」
そこまで喋った瞬間、シンに胸ぐらを掴まれた。
そのまま壁にドンと押し付けられ、息が詰まる。
「何だよあんた…」
「シ、ン…?」
「何で今更ッ!!あんたがもっと早く、姉上を…!!いや、あんたが素直に姉上の想いを受け止めていたら…!!姉上はあああぁぁっ!!!!」
シンが揺さぶる度に、ガツガツガツと頭が壁にぶつけられる。
だがその痛みよりも、シンの言葉が胸に突き刺さった。
「姉上はあの病に侵されていた…!!二十歳の成人の日の診察で発覚した!でも状態はまだ初期段階で、延命治療をすればまだまだ生きられたはずだった!!」
血を吐くような、叫び。
「だけど姉上は賭けをした!あんたに自分の想いが届けば、延命治療を施す…!でもあんたがそれを拒んだとき、姉上は…姉上は…!!」
家族を思っていた少年の引き裂かれたような叫びが、アスランを引き裂いた。
「特効薬の開発による常時臨床実験!?何なんだよ!何でそんな事しなきゃなんないんだよ!!わざわざ寿命縮めて、国民の為に命捨てるなんて、何やってんだよおおぉぉ…っ!!!!」
最後に見た彼女は、書類から目を話さなかった“王”。
かつてアスランが焦がれた、“カガリ”の姿は―…
ここ数年の記憶から、欠片も思い出せない…否、彼女自身が彼女自身を殺していた事に今更気付いた。
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