寄り道 二本目
□トライアングラー ―プロローグ―
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「人を形で例えたら…?」
「うん。どうだと思う?」
「んー…、三角形、かな。」
「何でだよ。どう見ても角なんて無いだろ?」
「僕は見た目を言ったわけじゃないんだけどね…」
「じゃあ何が三角形なんだ?」
「…うん。
君を見てて、思ったんだ。
人間てさ、みっつの頂点から成り立ってるんだなーって。
過去
今
そして―…未来。」
「…私には、お前と会うまでの過去が無いぞ?」
「うん、そうだね。」
「じゃあ私は人間として成り立ってないのか?」
「ううん。例え僅かでも、君にはちゃんと“過去”がある。」
「わずか…」
「そう。君は僕と出会った一秒後に、君には僕と出会ったっていう“過去”が残るでしょ?」
「あ…うん。」
「僕と出会う前の君は、“自分”ってものが成り立ってなかったんじゃない?」
「うん…。空っぽだった。」
「ね?」
「だけど…、いつか、“過去”は君の元に戻ってくる。」
「え…」
「願わくは、その時…、君の隣には“カガリ・ヤマト”を知って、支えてくれる人がいれば…いいなぁ…」
そう言って、病院の白いベットから上半身だけを起こした私の夫は、
穏やかに…笑った。
トライアングラー
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