番外編

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相変わらずのフライング物。
連載のネタバレ含んでますので、「気にしないぜ!」という方だけどうぞ。


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絶対に。どう考えても。


「私がやるのは可笑しいでしょう!!」


バンッと海軍本部にある自室に半ば強制的に設置された執務机を叩いた名無しさんは、先ほど運び込まれた書類の山を見て頭を抱える。

最重要機密とまではいかないものの、名無しさんの元に回される書類の多くは海軍の兵器や施設についてなどの“海賊に知られてはいけない情報”だ。


いくら私が七武海だからと言って、何だってこんな書類をよこすのか。
いやそもそも、どうして海兵でもない私が海軍の書類業務を手伝っているのか。


「信用されておるということじゃろうて」
「それはそうだけど……」


笑いを含んだ声に唇を尖らせれば、返ってくるのは苦笑だった。


そんな彼の名は、カク。

元・CP9構成員でありウシウシの実の能力者で、刀二本と両足の“嵐脚”を用いた“四刀流”を得意とする剣士。


W7にて麦わらの一味に敗北し賞金首扱いになったところを、部下として引っ張り込んだのは、確かそんなに前ではなかったはずだ。


長い鼻と丸い目は、どこかお伽話に出てくる嘘をつくと鼻が伸びる木で出来た人形を思い出す。
正直な話、パーツだけを見れば美形とは言えない気がするのだが、これがそうでもない。

背が高く、高い戦闘能力があり、基本的な性格は朗らか。

老成した口調に対し、ややあどけなさのある表情や仕草が何とも言えず魅力的で。

言ってしまえば、このカクという男。
ものすごく。もんのすごおおおおおおく、色男なのである。


かの造船会社で大工職の職長を務めていた頃は、ルッチやパウリ―に並んで尋常じゃない数のファンがいたのがその証拠だ。


というか、何だかんだ私の我儘――という名の強制的命令――のせいでW7の面々と和解させてしまっているので、今でもファンは大量にいるのだが。


「まあ、そう根を詰めることもなかろ」


肩をすくめ、どうせ困るのは海兵どもじゃ、というカクは、自分がこの前まで政府側だったことは忘れているのか、もしくは意図的に記憶から抹消したか。

何となく後者な気がしてグッタリと机に突っ伏すと、近寄ってきた気配と共に頭に置かれた大きな手。


「少し休憩したらどうじゃ?」


ポンポンと軽く頭を叩くように撫でられて、思わず弾かれたように顔を上げる。
そんな私に、どうしたんじゃ?と聞いてくるカクは、確信犯なのか違うのかたぶん違うんだろうね分かってますよはい。

七武海となった今でも、比較的に年が若いせいか子供にするようにグシャグシャと掻き回すがごとく撫でられることは、ある。
けれど今、カクがしたような撫でられ方をされたことは、ほとんどない。


優しく、柔らかく。


私自身がカクの“気持ち”を何とは無しに知っているからこそかもしれないが、酷く甘く感じられるのは、ハッキリ言ってむず痒くって仕方ない。

慣れない感覚に戸惑いつつ、それでも何だか居心地が良いこの空気を壊したくなくて、名無しさんは微かに熱くなる顔を隠すように視線を逸らし、すぐ傍に立つカクが離れないように、彼のジャージの裾を握りしめた。


どうやら雰囲気に酔ったらしい


===

ちょっとは甘くなった、はず!

カクとヒロインちゃんは年齢が近いので、かなり気安い感じです。

が、やはりカクの方が年上ということで微かに余裕を持って接している……ように見えます。
カクからすれば振り回されまくっているような気がして仕方ないことでしょう。


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