番外編

□†
1ページ/1ページ




暗躍組織・CP9の元構成員。

かつては闇の正義の名のもとに一般人でさえ手に掛けた自分が、まさか海賊の部下になる日がこようとは思ってもみなかった。


視線の先でうず高く積まれた書類の山に頭を抱える上司こと名無しさんを見やりながら、カクはゆるりと口角を引き上げる。


初めて出会ったのは、長期潜入任務中のことだった。

W7の造船会社ガレーラで大工職を務め、体が鈍りそうな平凡な日々を耐えた末に職長という地位についた矢先、船の点検と整備を依頼してきた女海賊が名無しさんだった。


1億という高額賞金首であるにも関わらず酷く平和ボケした考え方に感じた違和感は忘れないが、そもそも手配自体が海軍側の手違いだったのだから仕方ない。


仕事中の職人たちに差し入れするわ、近所の子供たちの遊びに付き合うわで海賊だということが信じられないような女だったが、それも実際の戦闘を目にすれば信じざるをえなかった。


名無しさんは通報によりやって来た海軍最高戦力と呼ばれる三大将の一人である黄ザルことボルサリーノの猛攻をかいくぐるだけでは飽き足らず、獲物の短刀で応戦し、見事引き分けに持ち込んだのだ。

そもそも光人間である黄ザルのスピードについていけるというだけで常人とはかけ離れているのだが、化物と言って過言ではない大将に“六式”の一つ“指銃”で一撃を加え、怯んだ隙に逃走するなど、それこそ化物並みの実力だ。


だから、数年後に名無しさんが七武海へと加入したと新聞で読んだときは、何の違和感もなく納得してしまったのを覚えている。


「少し休憩したらどうじゃ?」


本来なら受け持つ必要もない仕事に囲まれる名無しさんに声をかけつつ、机に突っ伏した頭を軽く撫でる。

強く、どうしようもなくお人好しなこの女に惚れてしまって、自分もだいぶ変わった気がするなと一人で微かに笑っていると、急に名無しさんが弾かれたように顔を上げた。

そのあまりに急激な動作に、思わず肩が跳ねたのは仕方ないと胸中で言い訳しつつ、何でもないふうを装って首をかしげる。


「どうしたんじゃ?」


別に妙なことはしていないとは思うが、反応が反応だ。
何か気に障ったのなら謝ったほうが良いのだろうが、肝心の名無しさんが口を開かない。


部下である自分にも気を使うのは今に始まったことではないが、気のせいか躊躇いがちに伏せられた目元は僅かに赤く色づいているように見える。

何がどうしたのかと名無しさんの言葉を待っていれば、クイッと引かれるジャージの裾。

普段なら考えられない想い人の行動に、本当にどうしたと目を見張る。


正直そろそろキャパオーバーなのだが、こちらのそんな状況など気づいていない名無しさんは、気恥ずかしそうに尋常ではない破壊力を持つ言葉を紡いでみせた。


「も、もう一回」
「は?」
「〜〜〜っ!だ、だから…。頭を、もう一回……」
「!!!!」


赤く染まった目元。見上げる瞳。
惚れた弱みか、悲しいくらいアッサリと崩壊した余裕を取り繕う暇もなく。


グラリとする頭を抱え、心の中でカクは誰にともなく叫び声を上げたのだった。


いくらなんでも可愛すぎる


===


よし。甘くなった!

さすがカク。中々書きやすいです。

相変わらずのフライングですが、元・CP9の面々はW7崩壊後、七武海であるヒロインちゃんの傘下に入ります。


そして普通に海軍本部に出入りしているため、スパンダムが怯えまくってますね。

ヒロインちゃんが「貴方、嫌い」と公言してしまっているため、ドフラミンゴのシャレにならない虐めのターゲットになってます。

.


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ