誤解から始まる海賊稼業

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強く強く日差しが降り注ぐ。
つい先日、新しい島の海域に入ったのか気候は一定して温暖、否、異様に暑い日が続いている。


「ふあぁぁ……」


二〜三人乗りの、キャラベルよりは小さく小舟と呼ぶには造りのしっかりした船。
その甲板に簡易式のテーブルとイスを広げティータイムを兼ねて読書に興じていたサエは、自分以外に誰もいないのを良いことに、これでもかという大あくびをこぼした。


長時間同じ体勢でいたため固まった筋肉を伸ばして、読んでいた本に栞を挟む。

私の首に1,500万ベリーという懸賞金がかかったのが半年前。
その後マスターにした宣言通り海賊として海に出たのが一ヶ月前だ。

出航までの五ヶ月間は、航海術や船の扱い方を覚えるのと、反対するマスターや知人を説得するのに必死だった。
そうしてやっとの思いで全ての問題を解決し、いざ出航というときになって、予想外のプレゼントがあった。

最後まで私が海賊になる必要はないと反対していたマスターが、船を用意してくれたのだ。


船の形状をざっと説明するとこうだ。

マストは一本。
後ろ甲板に当たる場所に半球体を更に半分にしたような形状の船室があり、その船室内にある床の隠し扉を開けると船底へと続く梯子が現れる。
船底は二層に分かれており、上層には食料や生活雑貨、下層にはバストイレなどの水回り施設と、ダイヤル式の立派な鍵がついた金庫室がある。

通常の船より水中に沈んでいる割合が大きいのがこの船の特徴で、その分倉庫扱いとなる船底の空間はかなり大きい。

金庫室など、たかが小娘一人の海賊船にこんな大きい金庫いるのかよ…、というくらいのサイズなのだ。

正直、マスターは私に何を期待しているのか全く分からないが、まあ、マスターなりの励ましというか餞別というか、なのだろう。


だからとは言わないが、出航してからの一ヶ月間、私は自分でも自信を持って(?)宣言出来るくらい海賊として戦果を上げてきた。

襲撃対象は一貫して海賊船で、当然、民間船や軍艦は襲わない。
しかし向こうから攻撃してきた場合は海賊だろうが賞金稼ぎだろうが、果ては軍艦だろうが関係無しに戦い、そして勝ってきた。

そんな勢いだから、初手配から半年しかたっていないのに、私にかかっている懸賞金は5,000万ベリーまで上がってしまった。


しかし、金額に比例するように実力も充分に付いてきたように感じる。

戦闘を繰り返したために、純粋な戦闘能力だけではなく危機察知能力や状況判断能力も伸びたのか、最近では海軍本部の少佐レベルをのしてしまえるくらいだ。


「ん…?」


ふ、と。ずいぶん攻撃的な気配を感じて周囲に視線を向けると、いつのまに現れたのか一隻の海賊船がこちらに大砲を向けて臨戦態勢をとっていた。


「あらら、全然気付かなかった」


まあ、ここまで接近されるまで気付かなかったのだから、あの海賊たちも大して強くはないだろう。

面倒だなあ…、とため息を吐きつつ“海賊”である以上、売られたケンカは買うしかない。

嫌々ながらもイスから立ち上がり、取りあえず手近にあった樽をわしづかむ。
中身は満タンに入った酒だが、私は酒何てものは飲まないので惜しくない。


本来なら中々重量のある筈の樽は、しかし今のサエにはどうという重さでもない。
右手一本でヒョイと軽く樽を持ち上げて、未だに大砲を向けてくる海賊船を見据え、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「ぅらああああああっ!」


構え、間を置かず全身全霊で掴んでいた樽を投げ付ければ、狙い通り。
流星のごとくすっ飛んでいった樽は、敵船の大砲にぶち当たった。


――ドッガアアアアアアァァン!


耳がバカになりそうな爆発音は、樽が当たったことで制御を失った大砲が暴発した音だ。

たった一撃、予想外の攻撃を受けたくらいで混乱するような海賊たちが、サエに敵う筈もなく…。

間髪置かずに自分の船を寄せたサエが敵船に乗り込んでから、乗船していた敵一同を綺麗サッパリ一掃するまで大した時間はかからなかった。



賞金はこうして順調にあがっていく



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オリキャラしか出てこないこの状況を打破すべく
そろそろ誰かと絡ませてあげたいんですが、誰を出そうか…


 

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