誤解から始まる海賊稼業
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“北の海”に存在するとある島。
その中でも比較的栄えているのではないかと思える町の、中心街でひときわ大きな酒場。
真っ昼間から遠慮のない陽気で豪快な男たちの笑い声がする店内で、サエは一人、カウンター席で静かに昼食をとっていた。
「…賑やかなもんだね」
ちらり、視線を向けため息をつく。
正確には「やかましい」や「うるさい」が当てはまるのだろうが、言わぬが華だ。
男たちは先程から、カットラスと呼ばれる海賊が好んで使うことの多い片刃で反りのある剣を振り上げ、酒臭そうな口でやたらと盛り上がっているのだが、実に“小物”っぽいオーラを醸し出している。
話している内容はほとんどが中身など無く、ひたすらに鬱陶しい。
店に入ってから三十分。
懸賞金のかかった海賊にしては我慢した方だが、もう限界だ。
「悪いけど、ちょっと騒がしくなるよ」
「はい…?」
一応店の主人とおぼしき男に断ってから――返事は聞かずに――腰の後ろにある短刀を一気に引き抜き、騒がしい男たちに向けて打ち込んだ。
――ズッバアアアァァァンッ……!
凄まじい――といっても加減はしたが、まあ一般人の全力を軽く上回るだろう――勢いで派手な音を響かせ、短刀は狙い通り男たちが囲んでいたテーブルを貫通する。
突然のことに水を打ったように静まり返る店内。
そんな中、妙に淡々とした様子で口を開いたサエは、決して冷たくも温かくもない光を宿した瞳で男たちを見据えた。
「失せろ」
たった一言。投げ掛けられた言葉に怒りの感情を見せ武器を構えようとした男たちは、しかし次の瞬間、その表情を真っ青に変えた。
それもその筈。
サエは1億ベリーの賞金首。
“偉大なる航路”の上でさえ、そうそうない懸賞額を持つ海賊が突然“北の海”に表れたら誰だって驚くだろう。
しかもそれが、大した産業も名物もない島なのだがら尚更だ。
凍りつくような店内で、微かに漏れ聞こえるのは恐怖からかひきつった男たちの呼吸音くらい。
それがどことなく癪に障り、イスをくるりと回転させる。
カウンターに背を預けるような体勢をとれば、正面に男たちをとらえる形になった。
「二度目だ。失せろ」
その体勢のまま、先程よりやや冷たい声音でそう告げる。
言葉に合わせ、ほんの少しだけ放ったのは、いわゆる“覇気”というもので――。
「う、ぁ……」
「わあああぁぁ…っ!」
“覇気”何てものに慣れていないのだろう男たちは、真っ青を通り越して真っ白になった顔面を恐怖に歪め、一目散に逃げ出していった。
剽悍羅刹来訪の噂はあっという間に広がった
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あ、れ…?
登場予定だった“彼”が出てこなかった…。
いや、わざとなんですがね?
と言うのも、長くなりそうなんで一旦切ったんです。
“偉大なる航路”でさえ畏怖の視線を向けられるヒロインちゃんは、きっと東西南北どの海に行っても怯えられます。
それだけ名前の通った海賊なんですね。
ちなみに、ヒロインちゃんは自分がどのタイミングにトリップしてきたか、正確には分かってないです
ルフィたちの手配書が出回ってないので、原作より前であることは分かってますが、その程度です。
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