誤解から始まる海賊稼業
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水の都・ウォーターセブン。
その中心街にあるガレーラカンパニー1番ドッグ前で、サエは両手にアタッシュケースを二つずつぶら下げた状態で佇んでいた。
「さて、と…」
現金が入ったケースに視線を向けて苦笑する。
人目につかない岬に船を停泊させ無駄に溜め込んでしまった財宝のうち一部を換金所に持ち込んだところ、ベリーにして4億という何とも大きな額となってしまった。
船に残っている財宝も後日また換金しに行くとして、修理代が今手元にあるお金で足りないようなら、また出直して来れば良い。
ということでガレーラまで来たのは良いのだが、依頼をするにはどうすればいいのだろうか。
大きな――むしろ巨大な――門にはチャイムや呼鈴なんて物は付いていないし、かといってドッグをぐるりと囲んでいるらしい腰くらいの高さにある柵を乗り越えるのも違う気がする。
声を上げて呼び掛ければ良いのかもしれないが、作業中の職人相手にそれをするのもはばかられる。
どうしようかと何度目になるか分からない問いを自分にぶつけていると、ふ…、と一つの気配が背後に立った。
殺気も闘気も、それこそ敵意もないために接近されても何とも思わないが、さすがに真後ろを取られるのは落ち着かない。
というか、普通の人間は他人の真後ろに立ったりしない。
行列に並んでいるなら別だが、声を掛けるにしても、単純にそこにいるだけだとしても、普通なら多少なりと位置をずらし斜め後ろに陣取るものだ。
だからたとえ、私に対する害意が感じられなくても“真後ろ”を取ったというだけで、充分に警戒する理由となり得る。
かといって、着いたばかりのウォーターセブンで喧嘩腰になる訳にもいかないので、私は単純にその場でくるりと回転し、背後の人物に向き直った。
「私に何か用?」
問い掛けると同時に顔を上げ、気配の主である人物を見上げる。
白いタンクトップに、特徴的な眉と髭。
シルクハットと肩に乗せた純白の鳩。
隅々まで個性的なその男は、見事なまでの無表情だ。
整った顔立ちと見事に鍛えられた均整の取れた体つきは正直に言って魅力的なのだが、何故か彼の立ち姿にゾワリと妙な悪寒がはしった。
――この男……。
何処かで見たことがある。
記憶の片隅にぼんやりと浮かぶ男の顔に、瞬間的に体に力が入る。
が、きっと気のせいだと頭を振り、私は再び男へと視線を向け、もう一度問いを繰り返した。
「私に何か?」
二度の問い掛けに、ようやく微かに男の口元が動いたのを見て返答を待った私は、次の瞬間に度肝を抜かれることになった。
「さっきからウロウロしてるが、うちの会社に用かッポー?」
「……は?」
男の口は全く動かず代わりに鳩が動いていた
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はい
鳩男、登場です
ヒロインは知識アラバスタ迄なので、ルッチを見てもピンと来てません
ほんのり「あれ何か見たことあるかも…?」というレベルです
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