誤解から始まる海賊稼業

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麦わら帽子に赤いベストの海賊少年。
物語の主人公たる彼にようやっと出会えたサエは、悲しきかなその感動に浸る暇さえ与えてもらえなかった。


「へー。お前も海賊なのか!にしてもよ、5憶ベリーってスゲェのか?」
「バッ……!アンタ何言ってんだっ!」


それというのも、果物をコックのサンジに剥いてもらうのを待つ時間、私の顔を改めて確認した海賊――ギンが情けない悲鳴を上げ、その理由を聞いたルフィが瞳を爛々と輝かせたことに要因がある


自称、“東の海”の覇者であるクリーク海賊団の一員らしくある程度の情報は頭に入っているらしい。

剽悍羅刹の通り名を持つ私を前に腰を抜かしたギンに苦笑しつつ、ずいずい顔を寄せてくるルフィの頭をわし掴んで距離をとる。
どうも“偉大なる航路”についての話を聞きたいらしく押しが凄いのだが、ルフィの場合は不快に感じないから不思議である。


「まあ細かいことを教えてしまうとフェアじゃないからね。ざっくりしたことで良いなら話してあげようか?」
「おお!じゃあ、うまい肉が売ってる島を教えてくれっ!」
「って肉かよ!せっかくお姉様が教えてくださるってんだから、もっと身になることを聞けよ!」


キラキラしい笑顔で「肉!」と言ったルフィに鋭いツッコミを入れたサンジは、怒鳴りつつも実に綺麗に切り分けられた果物を見事としか言い様のない鮮やかさで皿に飾り付け、それを恭しく差し出してくる。


――うん。

女性らしい扱いっていうのはこういうののことだよ。
厭らしさの欠片も感じさせないスマートさは、本気で見習ってほしい。

いや。誰とは言わないけどね。


「肉……と言えば、やっぱり水水肉かな。私は結構気に入ってるの」


W7はちょっと嫌な思い出あるけど、良い所だし。

ああ、そういえばルッチたちは元気だろうか。
最近はあまり行けていないが、あの気の良い職人たちは個性的過ぎて忘れるに忘れられない。


「ま、辿る航路によっては行けないかもしれないけどね」


あの船大工たちと麦わら一行が出会ったらえっらい騒ぎになりそうで、想像しただけで笑えてくる。


とまあ、それよりも。

じきにやってくる“首領”クリークをどうするか。
別にぶっ飛ばしても良いのだが、そうするとサンジが麦わらの一味に入るのか微妙になる。
ならばスルーが一番良いのだろうが、これだと私の心情的にいただけない。


「……うん。なるようになる、か」


わずかばかりの杞憂は無かったことにして、サンジから手渡された果物を一つ、口の中に放り込んだ。


ただ切るだけでどうしてこうも味に違いが出るのだろうか


===

果物に限らず、食べ物って切り方で味変わりますよね。

ということで?
お久しぶりです。

バラティエ辺り、買いましたよ。改めて読むと何でルフィがクリークに手こずったのか不思議になりましたね。

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