long-美食會

□第一印象は大切です
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 美食會に入ってから数週間経ったある日、私は本部の掃除をしていた。
 今日は会議があるので、色々な人の出入りがあるらしい。もしかしたら支部長や副料理長にばったり出くわしてしまうかも…。
 誰にも言えずにいたけど、私は長の付く役職の方たちの顔と名前がいまいち一致していない。むしろ名前すらあやふや。まだお互いに存在を知り合わないのならまだしも、私は全ての支部に出入りするせいで嫌でも支部長と会うし(と云うか私に出入りを命じるのは他でもない支部長たちだ)、副料理長たちと顔を合わせることがないわけではない(少ないけど…)。
 しかもお養父さんによれば、私のことを完全に覚えてしまっている人もちらほらいるとか…。
 自分は覚えてないのに相手は覚えてるなんて、気まずいでしょう?逆に、自分は覚えてるのに相手は忘れてるなんて、腹が立つでしょう?!
 ああ、名前を間違えるのが怖い!今日は誰とも会いませんように…!

「おー、紅蓮じゃん」

 いきなり会ったぁー!

 眼球をかたどった(?)ネックレスをした黒髪の男性と、赤いジャージを着てこめかみにバーコードを付けた男性。ああそうだ、第5支部と第6支部の…えーと…こうなったら賭けだ!

「っおはようございます、セドル様っ!ボギーロッド様っ!」
「え…?」
「…」
「…!」

 これは…間違えた雰囲気!

「誰かボクのこと呼んだ?」
「きゃっ!」

 背後からの声に恐る恐る振り向くと、ピンクの髪をした可愛らしいお方…えーと…

「トミーウッズ…様…?」
「うーん、惜しい。ボクがトミーロッドで、あっちがボギーウッズ。前々から思ってたけど、スタージュンから聞いた通り面白いねぇオマエ♪」
「うぅ…申し訳ございません…」
「んー?いーよ今回は。ただし…」
「ただし…?」

 トミーロッド様の真っ赤な唇の間から、虫っぽい足が覗いた。視界の端でボギー様が顔を青くしたのが見える。

「次間違えたら…お前虫の餌ね♪」
「…気を付けます…」

 もうやだ、この人怖い。


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