long-美食會
□人はそれを暇潰しと呼ぶ
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数日前、第6支部の者がIGOに乗り込み、四天王トリコにコテンパンにされた…らしい。
生憎私は本部にいたので詳細は知らないけど、どうやらこれは一大事みたい。だって私の前には久しぶりに会ったっていうのに苦い表情のお養父さん。私もメイド服でなく初日に渡された作業着を着て、ある部屋の中に立っている。
「…いいか、紅蓮」
いつになく真剣なお養父さん。
「一応お前は使用人という立場じゃが…この先必要に応じて食材の調達や、何かしらの戦闘を要することもあるかもしれぬ。
折角のグルメ細胞じゃ。細胞のレベルを上げるために修行をすることになったが…」
お養父さんは随分と迷っているみたい。あんまり心配させないようにしなくちゃ。
「大丈夫。強くなって、きっと皆さんの役に立ってみせるよ」
にこりと笑ってガッツポーズをすると、元気そうな私に不安が和らいだみたい。よかった…
…どんな修行か聞かされてないから、本当は滅茶苦茶怖いけどね!!
「話終わったぁ?
ならジョージョーは部屋から出てよ。
面倒だからすぐ帰りたいんだよねェ」
えっ?と思う暇もなく現れたのはトミーロッド様。面倒だと言いつつも、なんだか楽しそう。
「それでは…紅蓮をお願いします」
「なにソレ。やめろよ嫁に貰うみたい…ホラ早く出て出て」
「はい…」
トミーロッド様に促され、お養父さんは後ろ髪を引かれているような表情で部屋を出た。
「向こうから見たらここの壁透けて見えてるから安心しなよ」
マジックミラーみたいな感じか…
「本当はボクが言うことじゃないけど、知ってるから教えてあげるよ…細胞の活性化の為に、戦闘、食事、1週間の絶食、戦闘…って繰り返すんだってさ。
まあ戦闘って言ってもボクらからしたら腹ごなし程度だけど」
トミーロッド様たちの腹ごなし…激しそうだ。
「ということで、今から戦闘スタート!」
「えっ?」
「ぅぇっ…ぅぅ…」
トミーロッド様のお口から虫さん誕生って、えええぇぇぇぇ?!
「特別に捕獲レベル1以下のを選んでやったよ、有り難く思いな」
全然有り難くない…!
そんなことを考えている間に、私に向かってくる蜂っぽい虫3匹。震え上がる私。え、たった3匹だろって?…顔面が、凶悪なんです。
「じゃあ死なないように頑張りな〜♪」
「えっ、トミーロッド様も行ってしまうんですか?!」
「だってボク忙しいし」
じゃあまたね、とニヤつきながら部屋を出るトミーロッド様。追おうにも蜂っぽい虫3匹が行く手を阻む。それどころかお尻の針を見せつけてきて、ぶぅ〜んぶぅ〜んと低い羽音で低空飛行。私を囲むように…ああ、戦闘体制。
「──!!」
いきなり速度を上げた蜂っぽい虫は、剥き出しの顔に向かってくる。
──刺される…!
反応も何も出来ず固まる私の頬に…予想していなかった感覚。
…ぷにゅりっ。