long-美食會

□適材適所という言葉がある
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 某月某日、美食會本部にて…

「おいテーブルクロスはどこだ!」
「あんな巨体なテーブルに合うサイズの布なんてあるわけないでしょ!」
「あ、食器が数組足りません!」
「どうせ第6支部長あたりが割ったんだろ料理長と副料理長に違うやつ割り当てて特別感出しとけ!」
「BGMとかどうしましょう」
「今訊くことかソレ?!適当なクラシックでもかけとけ!」
「はーい」
「後ティーカップについてだけど…」
「まだあるんですか不備多すぎですよ!」

 …こんな感じで、私達使用人一同は大忙し。今日は会議という名の食事会があるので、テーブルセッティングや食器に関してのあれこれを行き当たりばったりで行っている。
 普段接点を持たない同僚と共に仕事が出来る、いい機会なんだけど…

「紅蓮装飾の蝋燭の準備頼んだ!」
「はい!」
「次はナフキンをそれっぽく畳んでおいて!」
「折り鶴でいいですか!」
「いいわよ!」
「えっ、いいんですか」
「後、余裕があったら氷の彫刻でも…」
「無理です」
「で、ですよねぇ…」

 …私、遊ばれてない?

「んなことないぞ!」
「…そうですか?」
「そろそろ厨房に料理取りに行って頂戴!」
「あ、はい!」

 なんだかはぐらかされた気がするけど、私は巨体なワゴンを押して厨房へと走った。今日は誰が調理したんだろう。少なくともスタージュン様ではないかな。スタージュン様なら予め食器を受け取って、自分で綺麗に盛り付けするんだから。…となると、グリンパーチ様かトミーロッド様か…。パッと見ゲテモノだけど味は美味しいグリンパーチ様の料理とパッと見虫だけど味は美味しいトミーロッド様の料理…どっちも変わらないか!

「副料理長、お料理受け取りに来ましたー!」

 厨房を見ると、誰もいない。あ、まな板の上に紙が…

『本当だったらグリンパーチの担当なんだけど、GTロボ回収に手間取ってるからボクが作ったよ。
 想像以上に早く出来たから帰るネ。チンして食わせなよ。byトミーロッド』

──どれだけ時間かかってるんですかグリンパーチ様…!

 …あと何よチンして食わせろって!
 …いや、いいか料理さえ揃っていれば。会議もうすぐ始まるし、チンして持って行こう…私は視線を、すぐ隣にある料理に向けた。

「…………」

 目の前に飛び込んできたもの…目玉、甲羅のある虫、脳、調理してあるか微妙なキノコ、グロテスクな魚介類、肉、ワサビ、謎の輪切りされた食材、酒瓶、ソースが複数。以上。

──チンしようがない…!

 流石の私も少し躊躇った。でも、これ以外に出せるものはない。

──まあ、いっか!

 全部ワゴンに乗せ、運んだ。あ、チンは一通りした。



 会議室という名のダイニングに行くと、既にユー様とスタージュン様とクロマド様が座っていた。まだ時間前だけど、流石真面目なことはある。
 ワゴンの上の料理を一瞥して、クロマド様は溜め息をついた。

「…トミーだな」

 作った人のことを言っていると気付き慌てて頷く。

「はい。グリンパーチ様はGTロボの回収で忙しいので、代わりだそうです」
「グリンめ…一体どれだけ時間をかけておるんだ」

 まあクロマド様、気が合いますね。

「…グリンパーチなら…」

 スタージュン様が、不満げに目を細めて口を開く。

「ペットにとうもろこしを食べさせたいと言っていた気がします」
「ウール大陸か…遠くまで行きおって」

 ユー様は無言で肩を竦め…料理を見てから私に言った。

「もうセッティングしてしまいましょう。どうせセドルあたりは遅刻魔なのだから。クロマド様、スタージュン様、お好きなものをお取り下さい」
「ム、そうか。ならワシはあれを…」
「…私は、それを…」
「私は奥のを」
「…『あれ』や『それ』じゃあ分かりません」
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