long-BestWishes!

□Anything Can Happen.
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「私も、一緒に旅をするの…?」

 返ってきたのは「え、しないの?」という言葉。
 すぐに別れるつもりでいたクレオには寝耳に水だ。

「えー、てっきり一緒にいてくれるのかと思ったぜ…『他の手持ちはまだ秘密』なんて言うからさ…」
「や…やめてよクレオ…!
 あたしクレオのバトル好きだし、キバゴもクレオのエンペルトが大好きなのに…」
「…僕ももっとクレオといたい。
 たった一晩じゃあ、全然話し足りないよ…」
「………」

 3人の庇護欲を掻き立てられる表情に思わず言葉が出ない。
 クレオだってサトシの成長した姿をもう少し見ていたい。アイリスとキバゴのコンビに癒されたい。デントのスキンシップに、慣れ、たい…

──ん?

 いつの間にか右前方にサトシ、左前方にアイリス、真後ろにデント。
 立ち上がってソロソロと逃げるも、距離は一定を保たれている。

「…クレオっ…!」
「わっ?!」

 前方から左右同時に年下コンビが飛び掛かってくる。
 2人はクレオを男だと思っているが、残念ながらクレオは15歳の少女でしかないのだ。
 体力に自信はあるが子供2人も受け止められない。
 後ろへよろめくも、すぐにトンと背中に何かが当たり安定する。

「サトシ、アイリス、クレオが苦しそうだよ?」

 頭上から声。首だけ振り返ると…

「大丈夫かい? クレオ」

 …ベタな話だが、クレオがもたれていたのは、デントの胸板だった。
 一瞬パニックに陥るもクレオは平静を装う。

「だ、いじょうぶ…助かったよデント…」
「いいや、まだだよ」
「……え?」

 サトシとアイリスが離れるのを確認すると、デントはクレオの腹回りにぎゅっと腕を回す。逃げられないように、強く。

「デン、ト…?」

 デントの目的はどうであれ後ろから抱き締められている状況にクレオは真っ赤になる。
 サトシとアイリスの驚いた顔。ああ見ないで…

「一緒に旅をすると言うまで離さないよ」
「そんな事言われても…」
「失礼を承知で言うけど、クレオは栄養が足りていないと思うんだ。
 15歳男子の平均身長を大きく下回っているし、抱き心地からして体重も少ないみたい。
 今からでも間に合うから、僕が栄養たっぷりの料理をご馳走するよ、旅の間ね?」
「…………」

 クレオが15歳男子平均の身長体重を下回っているのは当然のことである。男子ではないのだから。
 それに身長など13のときに止まってしまった。デントの料理ではどうしようもない。

──でも…

「…いいよ」
「!!」
「みんなと旅、する!」

──結局シゲルの言う通りだね。

 心底嬉しそうな2人に微笑みながら、クレオはまた振り返る。

「ねえデント、そろそろ離…」

 クレオを抱き締めるデントがあんまりにも嬉しそうに、優しく微笑みかけてきたせいで、クレオは続きが言えなくなってしまった。

──なんだろう、この気持ちは…

 一瞬よぎった疑問は再び2人が飛び付いてきたせいですぐに忘れてしまった。

Anything Can Happen.
(何が起こるか分かったもんじゃない。)



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