long-BestWishes!

□Come Along With Me!
5ページ/14ページ

「あの技は【虫食い】かな…」
「冷静に見てる場合じゃないでしょっ!
 こらクルミル!ピカチュウから離れて!」
「キバッ!」

 声に反応しアイリスとキバゴに顔を向けたクルミル。う、と身構えるアイリス。
 次の瞬間にはアイリスとキバゴに白い糸が噴射されていた。

「これは【糸を吐く】…ぁっ」

 技を観察していたクレオにも容赦なく糸は襲いかかり、アイリス達同様上半身を拘束されてしまった。

「クレオっ…ぅわ、僕まで?!」
「大丈夫かデン…」

 至近距離でいたサトシは、上半身だけでなく顔面もぐるぐる巻きにされていた。勿論ピカチュウも。

「クーリュリュー!」

 クルミルは満足気に笑いに森の奥へと入ってしまった。

「何だったのよ一体…」
「…まず、糸を切ろう」
「ふぉーふぁふぁー」
「…何言ってるか分かんないわよ…コドモねぇ…」
「今のは『そーだなー』って言ったんだよ」
「あっ、そっか、流石クレオ!サトシのこと分かってるわね」
「ふぉりゃーふぉーふぁふぉ、ふぉへはひははひょひはっはふぉんはー!」
「…今のは?」
「『そりゃーそうだろ、俺たち仲良しだったもんなー!』…かな?」
「ほほほーひ!」
「すっごーい!」

 デントは笑ってよいやら呆れてよいやら、複雑な表情を浮かべモンスターボールのボタンを押す。

「【シザークロス】で糸を切ってくれ…イシズマイ」
「マ―イ!」

 久し振りの登場にはりきるイシズマイを、クレオは興味深そうに見詰めた。

「ほのイヒフハヒはひふんほいふぇふぉふぉふぁへひゃっへ…」
「サトシは黙ってて…このイシズマイは野生の頃に家を盗られちゃって、あたし達が取り返したのよ。それで、1番頑張ってたデントに懐いて一緒に旅してるってワケ!」
「そんな事があったんだね…」

 クレオはデントならあり得そうだと思い内心微笑む。その場面を共に経験したかった、とも少し。

「イシズマイ、まずはサトシに【シザークロス】だ。次にピカチュウを」
「マイ!」

 デントはイシズマイに技の指示を出した。先程アイリスが言った「サトシのこと分かってるわね」という言葉に感じたモヤモヤとした気持ちを滲ませないように気を付けながら。


「助かった…ありがとうデント、イシズマイ」
「いやぁ、どういたしまして」
「マイ、マ―イー」

 イシズマイに糸を切って貰い、アイリスはハァとため息をつく。

「ほんっと予想外の足止めよねー。
 コジョンドとロズレイドは喧嘩しちゃうし、クルミルにからかわれるし…」

 クルミル襲撃により大人しくなっていた2体は申し訳なさそうに視線を泳がせる。どうやら一時休戦らしい。
 さてどうしようという空気が流れ出したところで、サトシが口を開いた。

「俺さ、あのクルミルをゲットしようと思うんだ!」
「えっ、サトシ、本気で言ってるの?」

 アイリス同様デントとクレオも怪訝そうな顔をした。ピカチュウとキバゴも。
 サトシは明るくああ!と返事をしてクルミルが逃げた方向へと駆け出していく。

「あっちょっと…待ちなさいよサトシー!」

 横道にそれるどころか突き進むサトシを見失うまいと、アイリスも草むらを掻き分けて行った。

「サトシにアイリス待って…一本道を外れたら自然の迷路なんだよー!」

 デントも慌てて追おうとするもパッと振り返り、

「行こう、クレオ」

 と残して走り始めた。
 残されたクレオはこれからもこんな感じなんだろうなぁ…とひとりごち、

「ということでこんな状況だから…暫く喧嘩は駄目だよ?」

 背後の2体に苦笑する。

「ローズ」
「コジョ」

 2体は肩を竦め笑いあう。

──結構仲良しだね。

 クレオはそっと胸を撫で下ろし、3人の後を追うのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ