long-BestWishes!
□Come Along With Me!
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「アーティ、さん…?」
デントが顎に手をやり、考えこむように呟いた。
「なんだか聞き覚えが…」
「そう、その通り!」
「へっ?!」
何の通りかは分からないがいきなりビシリと人差し指を立てたアーティに、4人はビクッとする。アーティは全く気にせず続ける。
「ボクは天才的アーティストのアーティ!でも創作活動に行き詰まり、芸術的インスピレーションを得る為に森での生活を始めたのさ」
芸術家は皆変人…アーティの挙動からふと思い出すも、口にはしないクレオ。
「でも、どうして森なんですか?海とか山とか、他に…」
警戒心0でサトシはアーティに訊ねる。
「ボクは虫ポケモンが大好きでね。彼らと共に生活をしていると、創作に必要な純情ハートを癒すことが出来るんだよ」
「じゅんじょー、はーと…?」
アイリスは首を傾げるも、アーティはにこやかなまま頷くだけだった。
「純粋な心でいないと、人を感動させるものは創れないよ。クレオちゃんも、そう思うだろう?」
いきなり話を振られ、クレオは少し反応が遅れた。
「はい…」
遠くを見詰め、数年前を思い出す。ポケモンと共に四苦八苦していた頃を。
──確かに純情ハート、かも…
「そう、思います」
──クレオ、雰囲気が優しくなったわね…
アイリスは不思議そうにクレオを見た。数年後に今を振り返ったら同じ雰囲気を醸し出すようになるということを、少女はまだ知らない。
「アーティさん、クレオは男ですよ!」
サトシの悪意のない訂正にアーティは怪訝そうにしたゴメンねと謝って、クレオは余計なことをと泣くに泣けない。
「ところでアーティさん、そのクルミルはあなたのポケモンですか?」
本来の目的を思い出したデントが訊ねた。そのクルミルはアーティの肩に乗り機嫌がよさそうだ。
「いーや?クルミルはお気に入りのポケモンだけど、ボクのじゃないよ」
サトシも思い出して口を開きかけるも、珍しくクレオの声によって遮られた。
「服を着ているから、ですか…?」
「その通り!」
再び人差し指を立てるアーティ。
「葉っぱの服を着ているからファッションデザイナーに人気なんだけど…ボクはアーティストだもの、美しいものは何だって称賛するよ」
だからキミのバトルも、という言葉はサトシに遮られた。
「俺、そのクルミルをゲットしたいんです!」
「ぬぅん?」
アーティの方眉が上がる。
「このクルミルはなかなか芯が強いよ?認めた相手にしか懐かないんだ。あのコジョンドくらい難しいんじゃないかなぁ」
──コジョンド?
4人の視線はクレオの腰に装着された7個目のモンスターボールに向けられる。アーティが不思議そうな顔をした。
「あの…そのコジョンドって…?」
おずおずとしたクレオに、アーティは首を傾げながら答える。
「ヤグルマの森はコジョンドの分布地じゃないから、どこからか住み着いたようなんだよ。修行が好きな女の子でね、よく気になったトレーナーにバトルを挑んでいるんだ」
雌だったことに衝撃を受けるも、なんとかボールに手を伸ばした。
「もしかして、この子ですか…?」
カチリとボタンを押したら光線と共に現れる白銀。
朗らかに話し掛けるアーティ。
「やあ、久し振りだね」
本人だった。