long-BestWishes!

□You Can Call A Storm!
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「コ、コジョォ…」

 連続でヨーテリーの【電光石火】をくらい、コジョンドはつらそうに顔を歪めた。クレオも苦い顔をするが、相変わらずソムリエールから目を逸らさない。

──クレオ、このままだとコジョンドが…

 審判をしているサトシは気が気ではなかった。
 カベルネはそんなクレオの様子に勝ち気そうな笑みを浮かべる。

「自分から勝負を請け負うくらいだからどれだけ強いのか楽しみにしてたけど、大したことないのね。
 コジョンドもビターな表情だし、終わらせてあげるわ!
 ヨーテリー、【突進】!」

──来た!

「きめるよ、コジョンド! 【ドレインパンチ】!」
「ッコジョ!」

 ヨーテリーが指示をされるタイミングを見計らい、クレオもコジョンドに指示を出す。ハッとしたコジョンドは拳を構え、こちらに突撃ヨーテリーに向けて突き出した。

「コジョッ…」
「キャンッ…」

 勢いのせいか、互いに撥ね飛ばされる。しかし【ドレインパンチ】は相手に与えたダメージによって自らの体力を回復する技であり、一方の【突進】は相手に与えたダメージが跳ね返る技である。現段階ではコジョンドが優勢だ。
 カベルネはコジョンドとヨーテリーの距離を離そうとするも、クレオはそれを許さない。

「しっかりして、ヨーテリー! コジョンドから離れて【鳴き声】よ!」
「いいよコジョンド! もう1回【ドレインパンチ】!」

 コジョンドは素早い。ヨーテリーが距離を置く間も与えず、【ドレインパンチ】を再びくり出した。かなり回復ができたようで、腕の長い体毛が軽やかに揺れる。
 よろめくヨーテリーを見て、クレオは勝利を確信した。

「フィニッシュ、【跳び蹴り】!」
「コジョォッ!」
「キャンッ…!」
「ヨーテリー!」

 【跳び蹴り】はヨーテリーに命中し、ヨーテリーは弧を描いて空中に放り出された。カベルネは駆け出して、小さな体を受け止める。

「ありがとう、ゆっくり休んで…」
「クゥン」
「よくやったね、コジョンド」
「コジョッ」

 カベルネがモンスターボールにヨーテリーを戻すのを見終え、コジョンドを労ってから、クレオはいつまでたっても審判役のサトシが「ヨーテリー戦闘不能、コジョンドの勝ち」と言わないことに疑問を抱いた。そしてバトルが始まって初めてサトシのいるであろう位置を見ると──絶句した。

「えっ、何で…!?」

 そこには必死に何かを説明するサトシと、真面目に耳を傾けるデントと、驚いたような呆れたような表情を浮かべるアイリスがいた。
 自分が見られていることに気付いたサトシは大慌てで「ヨ、ヨーテリー戦闘不能! コジョンドの勝ち!」と宣言する。
 デントが1歩前に出、クレオとカベルネを交互にしっかりと見詰めながら言った。先程よりかは幾分か柔らかな笑顔と声だった。

「このバトル、僕に預からせてくれないかな。
 サトシとクレオのポケモン、総入れ替えなんてさせられないよ」
「…勝手にしなさいよ」

 カベルネはしぶしぶ了承したが、クレオは返答しかねていた。
 クレオ、と、デントが小さく呼ぶ。

「…私達は、負けないよ」

 可愛げのない返事に、デントはフフッと笑みをこぼした。

「分かってる。だからこそ、だよ」

 納得のいかない様子のクレオだが、「いいよ」という言葉が口からこぼれ落ちた。コジョンドが「いいの?」という顔で振り向くのを見て、あっ、と口を押さえる。デントはクレオの仕草を見ていたが、その「あっ」は無視することにした。

「じゃあ決まりだね。お疲れ様、コジョンド」
「コジョ」

 コジョンドに手を引かれ、クレオはデントとすれ違いにフィールドを出る。サトシは戸惑うクレオにちょっと笑ってから、審判の仕事を続けることにした。
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