long-BestWishes!

□Anything Can Happen.
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 しんと静まるバトルフィールドと観客席。
 リラックスした表情なのは、ジムリーダーのアロエのみ。

「さあ来な、ハーデリア!」

 アロエはサトシの時と同じようにハーデリアを繰り出した。キリリとした表情がたくましい。

「おいで、エンペルト!」

 クレオはボールカプセルをセットしたモンスターボールを投げる。
 まず現れたのは黒煙に稲光。それが徐々に薄れてエンペルトの黒く滑らかな体が見え、稲光に嘴や角が際立つ。

「ほお…」

 アロエは感心したように息を吐き、口角を上げた。
 掴みは上々だ。

「面白いことするね! さあボーヤの先攻だ、来な」

 クレオとエンペルトは一瞬視線を交わす。

「エンペルト、【アクアリング】!」

 エンペルトが水のリングを纏った瞬間、

「ハーデリア、【吼える】!」
「バウッ!!」

 サトシ達も苦戦したあのコンボがエンペルトを襲い、エンペルトはモンスターボールへと戻されそうになる。
 だがクレオの方が僅かに早かった。

「【アクアリング】を脱ぎ捨てて!」
「えぇっ?!」

 突拍子もないクレオの指示に、アロエだけでなくサトシ、デント、アイリスも驚く。
 アイリスが勢いよくデントに訪ねた。

「そんなこと、出来るの?!」
「僕にも分からない…」

 そんなこと、試そうと思ったこともない。

「なあ、出来てるぞ!」
「ええっ?!」
「エンッペーーーーーッ!!」

 サトシの言葉に再びフィールドへ視線を戻した2人は、パートナーの指示に懸命に応えるポケモンを見た。
 エンペルトは腕部分に纏っていたアクアリング2、3個を腕を思い切り振ることで体から離す。
 エンペルトと入れ違いに現れようとするレントラーに、クレオは早々と指示を出した。

「レントラー、出たらすぐに【スパーク】!」
「ルアーン!」

 鳴き声と共に飛び出す閃光。フィールドに残ったアクアリングを壊し、電気を帯びキラキラした飛沫が2体に降り注ぐ。

「ルアーン!」
「キャンッ?!」

 閃光がレントラーの黒い毛並みに映える。レントラー自身が電気タイプだからかダメージは感じないようで、ぐぐっと体を伸ばし嬉しそうな笑顔だ。
 一方ハーデリアは今までになかったタイプの攻撃方法に思わず驚いてしまったようだ。
 光の装飾となった【スパーク】の威力など弱いものだが、ついビクリと怯える。

「ハーデリアは少し休みな。交代だミルホッグ!」

 アロエはハーデリアを戻し、ミルホッグを繰り出す。

「さあ、やっておやり! 【黒い眼差し】!」

 キッとレントラーを見やるミルホッグ。
 これでもうレントラーは戻せない。

「どうしようデント、【黒い眼差し】がきまっちゃった!!」
「負けるなクレオー!」
「ピカカ、ピカ一!」
「キバ〜!」
「ヤニャップ!」

 アイリスは眉をハの字にしてデントを見、サトシは必死で叫ぶ。ピカチュウにキバゴ、そしていつの間にか外に出ていたヤナップも大声で応援した。ヤナップは少し噛んでしまったけど。
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