long-美食會
□目標は高く!
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「やべーな、コレ…」
すっかり包帯の取れたセドル様の声が第6支部に響いた。同じ部屋にいるのは第6支部のメンバーと私達使用人と料理人の7分の1、そしてお養父さん達技術部のメンバー。全員が揃いも揃って大画面を見詰め、映し出される光景を眺めていた。
「あれが四獣…」
…そう、私達は四獣から逃れる為にここに集められていた。使用人と拐われた料理人は本部、第1〜6支部に7等分され割り振られ、人口の密集を避ける。全員が居住地である本部にいたら、画面の都市みたいに狙われかねないもの…
画面に映るのは四獣だけじゃない。私達美食會が延々と危険視してきた、美食四天王がそこにいた。四獣を倒そうとしているということは明白で、それなのにやや押され気味で、私達はやきもきするしかない。
じれたのか、部屋の中の誰かが叫んだ。
「頑張れ、四天王ー!」
声援は続く。
「四獣なんてやっちまえーっ!」
「お前達が負けて都市の人間が食われたら、次はこっちに来るかもしれねえんだからなー!」
「殺せー!」
「倒せー!」
…ちょっと不純すぎないかな。でも、本当にこっちに来られたら困る。支部長も副料理長も分散してるし、第6支部のメンバーで勝てるとは思えない…
「おいお前らァ! 四天王なんかの応援すんじゃねえ!」
バッと振り向き、セドル様がクワッと目を見開いた。怯える一同に胸を張って続ける。
「安心しろって! なんかあったら、支部長としてオイラがお前らのこと守ってやっから! ザイパーとかベイとか、紅蓮もいるしさ!」
…は、はああぁ?!
無理ですよ、という意味合いの言葉が3つ重なった。それでもセドル様はめげない。
「ダイジョーブダイジョーブ、オイラ達なら余裕だってば!」
「膝がガックガクに震えてるくせに何言ってんですか!」
「はあっ?! ビビってねーから! 武者震いだから!」
セドル様はギクリといった様子で両膝を押さえた。でもお養父さんの小さな声にそれをやめる。
「…怖れることも無理はありませぬ」
「ジョージョー…べ、別にビビってなんか…」
お養父さんは小さく首を振った。
「未知なるものは恐ろしいものです…今はあの若造達の成功を祈るしかありますまい」
「…そうだよなあ…」
セドル様は再び画面に振り向いた。
「でも、応援すんのはちょっと癪なんだよね」
「そういうものです」
それから第6支部は、四天王が四獣を倒す瞬間まで静寂が続いた。
*