LongNovel
□She is like the cat
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好きな人がいる。でもその人には別の好きな人がいる。それでも諦めきれずに告白をした。勿論優しい謝罪が帰ってきただけだった。
ごめんな、朽木、お前は妹みてぇなもんだ。
それ以上でもそれ以下でもない。当然と言えば当然で、隣同士、登下校もずっと一緒だった。
彼女ができても、それを変えようとはしなかったあの人。
「朽木ー、帰るぞー」
「ごめん先輩、用事あるから」
「付き合うよ」
「先輩は別にどーでもいいけど、彼女さんに悪いもん」
じゃあね、と手を振る。この時いつも彼女さんは決まってごめんなさいと言う。
いやよ、すっごくいい人なんだから。やな奴ならいくらでも詰ってやるのに。
得に用事があるわけじゃない、ただの言い訳。
ただ一緒に帰りたくないだけ、そう、防衛本能みたいなもの。
仲の良い二人を見て傷付きたくないだけなんだ。
「朽木さん!」
「・・・・・・げ、」
「今うっかりげ、って言わなかった?」
「気のせいよ」
市街の某CDショップでごそごそと洋楽を漁っていた。どこか聞き覚えのある声で名前を呼ばれたためくるり、振り返ればあのオレンジ。
「洋楽とか聞くんだ」
「かじる程度よ」
「ポップスとか?」
「ロックのほうが好き」
へぇ。自分から聞いといてなんて素っ気ない答え。
一枚のフォークロックを手に取る。有名な一枚。
「ディランじやん」
「知ってるの?」
「好きだよ、俺も」
邦題はそう。
風に吹かれて
(ところであんた何しにきたのよ)
(・・・えっと、)(本物のばかね)