LongNovel
□She is like the cat
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とりあえず何か飲もうよ、奢るし。そう言われてついて来たのはこじんまりとした珈琲店。路地裏にちょこんと佇む雰囲気はあまり一見さんを受け付けない感じ。
ちりんちりん、と控えめなドアベルが鳴って、いらっしゃい。と緩やかなテナーの声。
窓際の席を陣取る、と言っても私たち意外にお客はいないから選び放題な訳だが。
「で?急に何なのよ黒崎くん」
「いや、この前のこと謝ろうと思って」
なんだ、あんなことを公衆の面前で口走るような輩でもある程度の常識は持ち合わせているのか、
「性格が悪いからフラれたなんて言ってすみませんでしたっ!」
「性格悪いは言われて無いわよっ」
と思ったが初恋にも似た私の淡い期待は打ち砕かれた。
ちくしょう、こいつは私に謝りたいのか恥じをかかせたいのかどっちなんだ。
おもむろに荷物を持って立ち上がる。ダメだ帰ろう、こいつといると血圧が上がる。
「待って朽木さん!コーヒーには何の罪も悪気もないから!」
「黒崎くんには悪気があるのね!?」
「えっ?違っ!!」
はああ、とため息をついて座り直す。彼はホッとしたのか胸を撫で下ろしてカウンターの人物に声を掛けた。
「マスター、俺モカ。朽木さんは?」
「ホットミルク、とフォンダンショコラ」
「え?ふぉ・・・」
「おごってくれるのよねぇ?」
「・・・モチロンデス」
お待たせしました。の声とともに運ばれてきたフォンダンショコラとホットミルク。
「あれ、マスター俺のは?」
「レディーファーストに決まってるだろ」
まじかよー、マスターえげつねー、そうして机に突っ伏す。
「でも珈琲店主としてはコーヒー頼んで欲しかったけどね」
「あー、すみません私・・・」
珈琲は苦手
(・・・やっぱ似てるなぁ)
(え?何?)(んーん、何でもない)